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八代尚宏 今さら聞けない「働き方改革」の真の目的

仕事

八代尚宏 今さら聞けない「働き方改革」の真の目的

八代ゼミ連載(第1回)/“低成長時代の経済成長戦略”だと理解すべし

日本的雇用慣行のメリットとデメリット

 日本的雇用慣行の3本柱である、「長期雇用保障」「年功賃金」「企業別組合」は、新卒採用で雇われた若手社員に長い業務上の訓練(OJT)を施すことで、企業内熟練を形成するためには最も効率的に機能してきた制度です。忘れてはならないのが、これらの制度はいずれもメリットとデメリットが表裏一体の関係であったことです。

 今では悪しき習慣の代表格である、「慢性的な長期労働」ですが、雇用する側、される側の双方にメリットがあったからこんなに続いてきたとも言える。例えば、「お客の注文に応えられる」「残業代がもらえる」などですが、実は長時間労働は雇用保障の大きな柱になっていたように思えます。もともと残業の少ない欧米では不況の場合の選択肢としてレイオフしかありませんが、普段から長時間労働している日本では、これまで人員の頭数で調整するのではなく、労働時間を減らすことで不況を乗り切ってきた、とも考えられるからです。

 こうして可能になった長期雇用保障は、常に「定年制」とセットです。なぜなら昇給し続ける年功賃金を調整するために「定年制」という制度が必要となるからです。しかし、これからの高齢化社会では、定年制もコストが高くつく。男性は81歳、女性は87歳にまで平均寿命が延びた高齢化社会では、まだ働く能力のある60歳を定年退職させてしまうのは、労働力の無駄遣いでしょう。欧米主要国では既に「定年退職」は禁じられています。年齢に基づく差別だと捉えられているからです。

 次に「無限的な働き方」について考えていきます。日本の企業においては、いわゆる総合職は一般的に、人事から命令があれば、いかなる仕事でもこなさなければならないのが通例です。人事の一声で所属先の配置転換や転勤などに従わなければなりません。こうしたジョブローテーションと長期的な熟練訓練を経て、多様な仕事経験の蓄積ができると見る向きもある一方で、熟練形成の訓練機会は本質的な差別を抱えている、というデメリットを見逃すわけにはいきません。

 入社時にさほど能力の違わなかった二人がいるとします。一人は配置転換により、生産性の向上が望める仕事に就き、もう一人は生産性の上昇が期待できないルーティン中心の仕事に就く。こうしたキャリアパスの差によってこの二人の生涯年収には大きな差が生じてしまいます。人事の采配一つで配置転換が決まるわけですが、配置前に職種における個人の潜在能力を可視化することはなかなか難しい。そのため、その人が属している集団の能力指標によって判断されるのが通例です。

 例えば、女性は妊娠出産によって離職する可能性が高いからルーティーン業務へとか、出身大学の偏差値のスクリーニングによって、より生産性の高いキャリアパスが可能になるなど、雇用待遇に格差をもたらす本質的に差別的な優遇が生じている。こうした差別を「統計的差別」といいますが、この統計的差別は「大企業と中小企業」「正規社員と非正規社員」「男と女」「年齢」「外国人」など労働者同士の利害関係において見えざる障壁を生み、労使対立ならぬ、「労労対立」を引き起こす要因になっているのです。

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