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音声・言葉を使わないから磨かれる「対話力」

ダイアログ・イン・サイレンスリポート(中)体験DUAL記者に立ちはだかった「恥ずかしさ」の壁。打破して得られた喜びとは?

今夏、東京・新宿で開催されたイベント「ダイアログ・イン・サイレンス」。8/1~20の会期中、連日満席、追加チケットを発売すればすぐに売り切れるという人気イベントでした。「ダイアログ・イン・サイレンス」は無音の中で、聴覚障がい者が案内人となり、参加者自身が「対話」を楽しむという体験型のイベント、いったいどんなことが行われていたのでしょうか。実際に体験した日経DUALの記者が、言葉を使わないイベントを言葉を使ってルポします。

「ダイアログ・イン・サイレンス」リポート
(上)聴覚障がい者から学ぶ本物のコミュニケーション力
(中)音声・言葉を使わないから磨かれる「対話力」 ←今回はココ!
(下)障がいがあるだけでは、人は不自由にならない 

写真提供/ダイアログ・イン・サイレンス<BR>
写真提供/ダイアログ・イン・サイレンス

顔の筋肉ってこんなに固かった!? という経験からスタート

 「ダイアログ・イン・サイレンス」は、毎回12人までの人数で開催されます。親子や友達同士で参加することもできますが、初めて会う人とも一緒に体験することになります。1回につき12人を上限としているのは、人数が増えると、どうしてもお互いの顔を見る余裕がなくなり、注意が散漫になってしまうからだそう。子どもは小学生から参加可能ですが、今回の参加者は大人だけでした。たまたまかもしれませんが、女性のほうが多く、お盆前後だったこともあるのか、普段は仕事をしている世代、20~50代の方々と一緒にダイアログの体験がスタートしました。案内人は聴覚障がい者の「アテンド」と呼ばれるスタッフ。この日は、えりりんさんという女性がアテンドでした。(※写真は取材当日のものとは異なります。)

写真提供/ダイアログ・イン・サイレンス<BR>
写真提供/ダイアログ・イン・サイレンス

 まず初めに、参加者は全員ヘッドホンを装着します。ほぼ完全に無音になる装置です。大きくガタンと響くような音はかすかに感じられますが、それが本当に音なのか、それとも振動を音と感じているのかはよく分かりません。とにかく話声があったとしても全く聞こえない状態になります。ここで全員、聞こえないだけでなく、言葉を発すること自体が禁じられます

 ヘッドホンをつけてじっとしていると、自分の脈拍が聞こえてきます。ドクンドクンという、音というよりも響きが伝わってくると言ったほうがいいかもしれません。無音のはずなのに、自分の体の動きの音がよく聞こえるという状態です。その脈のリズムを聞いて、「今、私は落ち着いている」と分かるという、不思議に客観的な体験でもありました。

 無音の状態で、パーテーションで仕切られた5つほどの部屋を、アテンドの案内に従って巡り、部屋ごとに違うコミュニケーションにトライしていきます。初めから、音声・言葉を使わずに複雑なコミュニケーションをするのは難しいもの。まるでウオーミングアップみたいに手を動かしたり、表情を動かしたりすることから始まります。

 この写真は、表情によってコミュニケーションする部屋の様子。真ん中の台に映し出される映像を見て、どんな気持ちになるかを顔だけで表現したり、またはその映像の顔まねをしてみたりします。

顔に注目できるよう、LEDライトが当たるフレームから顔を見せる参加者の様子。中央に置かれたスクリーンに映し出される写真を見ながら、アテンドの指示により、様々な表情をしてみる。写真提供/ダイアログ・イン・サイレンス<BR>
顔に注目できるよう、LEDライトが当たるフレームから顔を見せる参加者の様子。中央に置かれたスクリーンに映し出される写真を見ながら、アテンドの指示により、様々な表情をしてみる。写真提供/ダイアログ・イン・サイレンス

 顔の表情は、当たり前のことですが、筋肉によって作りだされます。ここでは、普段は全く使っていない筋肉があった!と気づくくらいに顔を動かすことになります。例えば赤ちゃんのふくれっ面が映し出されて、まねをしてみて、とアテンドに促されます。下唇がめくれあがった様子は、見るからに不服そうな表情なのですが、これをやってみようとするとなかなかできません。筋肉が固いのです。でも、実はそれだけが表情が動かない理由ではありませんでした。

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