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民間人校長 感動を目指す想いと命を預かる緊張感

子育て・教育

民間人校長 感動を目指す想いと命を預かる緊張感

2年ぶりに訪れた「びわ湖青少年の家」で得た一生物の体験

学校行事を通じて子どもは様々な体験をします。何かを成し遂げたときの表情にはまわりも感動させる力があります。ただ、この感動に流されると、安全への判断が狂う危険も──2年ぶりに訪れた「びわ湖青少年の家」で民間人校長として働く山口照美さんが改めて感じたこととは?

 7月下旬、夏休みに入った直後に5・6年生を連れて滋賀県高島市にある「びわ湖青少年の家」へ自然体験学習に出かけた。2年前、この施設は大阪市の事業整理で廃止が予定されていた。少しでも存続の役に立てないかと、当時の連載で「数値化できない2泊3日の教育効果」という文章を書かせてもらった。その文章は多くの関係者の手に渡り、「びわ湖青少年の家」の教育的な価値を伝えることができた。最終的に、大阪市は手放したが教育関係団体が購入し、民間企業が運営を担う形で昨年の6月より再開している。お陰で、2年ぶりに子ども達を連れていくことができた。私にとって、思い入れのある場所だ。

宿泊行事で見直す「安全意識」と「生活スキル」

 宿泊行事は「子どもの安全を守る」ことに細心の注意を払う。教職員の目配りと同時に、地元の天候を知り尽くす施設スタッフの判断が重要だ。施設の運営会社は変わったものの、以前のベテラン所長さんが残っていてくれたので、安心できる。そして、子ども自身が「命を自分で守る」意識が必要だ。

 2日目、いかだ作りをして湖に浮かべた後、悪ふざけをした子ども達を施設スタッフが厳しく叱った。「このままでは、明日のカッターには乗せられない」。カッターとは、訓練用の小型の手こぎボートだ。12人ずつ、2艇を出して3キロ先の神社の鳥居を目指す。2人で1本の櫂を操る。全員で気持ちと力を合わせなければ、進まない。現場のプロに叱られ、子ども達は真面目な表情で考えていた。

 自然体験は、観光旅行ではない。役割も多く、助け合って生活する。担任は、今まで接点の少ない児童をさまざまな班活動で組み合わせ、絆を深めていく。

 私自身は、親として子どもの「生活力」がわかって興味深い。お風呂の前で待っていると、子ども達がやってくる。濡れたタオルや汚れ物を入れるビニール袋を持参できる子は、先の見通しが立てられる子。着替えやタオルをコンパクトにまとめて、小脇に抱えてくる子は、身仕舞いのいい子。部屋の荷物も、こまめに整理していた。一方で、ボロボロと物を落としながらやってきたり、忘れ物に慌てて取りに戻ったりする子もいる。学力だけでは測れない、生活スキルが垣間見える。


飯ごう炊さんの後の鍋磨きは、簡単に“合格”が出ない。次に使う人のために、必死で磨く。自分ができた後、仲間の手助けをする姿に成長を感じた

 食事係の児童たちが素晴らしかった。みんな、家でお手伝いをしているのだろう。全体を見渡し、必要な物を次々運び、重そうな物を持っている仲間のところに駆け寄り、こぼれた汁をさっと拭く。家で留守番をしている、2年生の娘を思って少し焦る。彼女は食事の準備を手伝っているだろうか? 初日は何をするにも戸惑っていた子も、仲間のやり方を見て聞いて、手際よくなっていく。「真似て学ぶ」現場をたくさん見かけた。子ども達の活躍がうれしくて、家庭にも伝えたくて、携帯から学校ホームページを28回も更新してしまった。

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