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民間人校長 組体操問題で考えた運動会の意味とは

子育て・教育

民間人校長 組体操問題で考えた運動会の意味とは

運動会で子ども達が学ぶPDCAの視点と本番プレッシャー

山口照美さんが民間人校長を務める小学校が運動会の日を迎えました。ニュースで報じられる組体操の事故を踏まえ、当日まで山口校長が考え続けたのは、運動会を開催する意味でした。

 敷津小に来て、3回目の運動会が終わった。最初のラジオ体操のとき、教頭先生がぐいっと背を反らして「ああ、ええ天気や」とつぶやいた。ほんまやなぁ、と青い空を目にしながら「今日はいい日になる」と確信した。保護者席には、10カ国にルーツを持つ児童が通う学校らしく、様々な国の人が交じっている。

 小さな学校でも、行事の手間は大規模校と変わらない。教職員50名の学校でも、17名しかいない本校でも、運動場にラインを引き、テントを張り、得点板を書き換え、児童を誘導し、放送をする。学校に関わってくれる学生支援スタッフや、教育実習生は組体操や騎馬戦に加わる。PTAの役員さんは、お茶出しや警備、写真撮影を手伝ってくれる。子ども達も放送やゴールテープの係に忙しく、14人しかいない6年生の座席は空きっぱなしだ。

 初めて役割を持った4年生の、デビューの場でもある。私は本部席で、あの子の成長、この子の才能を見つけてうれしくなる。本当に「全員」でやらなければ、運動会が成立しない。最後の挨拶では、精いっぱいの感謝を伝えた。

「組体操規制」で考えたこと

 運動会の前後は、八尾市の組体操事故の報道でいっぱいだった。その前に、大阪市教育委員会からは「ピラミッドは5段まで、タワーは3段まで」の規制が通達されていた。敷津小は人数が少なく、5・6年生が一緒にやって、やっと36名。一クラス分だから、大きなことはできない。また、少ない人数で無理に大技をやると、体力的に難しい子を強引に加えなければならない。細かい配慮のうえで、大技に頼らない組体操は続けてもいい。危険なことをしなくても、バランス感覚と、仲間と力を合わせる力を育てる技はたくさんある。


「波」や「ウエーブ」と呼ばれる技。敷津小は人数が少ないので、全員が手をつないで息を合わせる。組体操は危険な技だけでないと知ってほしい。子ども達のズボンには、全員に役割を書いたリボンが縫い留められている。それも、高学年らしくてかっこいい

 全員が一列になって腕を組み合わせ、上半身を次々に倒して作る「波」という組体操がある。友達から伝わって動きを感じ、緊張しながら自分も動く。「そんなものをやって何になる、学力向上にも体力向上にもならない」と言う人もいるだろう。

 本校には音楽発表会がある。将来、音楽で生きる一部の人以外は、合唱や合奏も、確かに「生きる力」とは一見遠いかもしれない。でも「自分の役目に責任を持つ」「他人と息を合わせる」体験は、大事だ。

 組体操の規制を通じて、今回は何度も考えた。軍事教練の名残だと、日本の運動会に否定的な人もいる。地域・保護者や教職員の思い込みや郷愁で、子どもを置き去りにしていないか。本当に必要なのか。

 あちこちの学年の練習をのぞきながら、もう一度、自分なりの答えを出した。それは「本番がある効果」だ。恐らく、どの公立小学校でも「親に喜んでもらうため」に運動会をやっているところなんてない。大事なのは練習過程だ。では、誰にも見せずに練習を積めばいいじゃないかと言うかもしれない。それも違う。「本番プレッシャー」を体験することに、大きな意義がある。見せる相手のいない作品より、相手意識があるほうが熱心に取り組める。

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