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喜久屋 社内に従業員の子が安心して過ごす場がある

小酒部さやか/昭和40年代から男女の垣根を無くす試みを続けてきた会社。その理由とは?


ママ従業員の皆さんも「安心して働ける」と口をそろえる

―― 評価制度はどうされていますか? 多工程多台持ちだと皆が同じことをできることになり、皆同じ能力を持っているということですよね。その辺りをもうちょっと詳しく教えていただけますか?

中畠 例えば10の工程のうち10できる人と、3できる人では評価は違います。さらに評価には熟練度も加わります。機械化できる部分もありますが職人技の部分もあります。例えば、染み抜きは機械では難しく、技術も必要です。入門編は「この部署から始める」といったスキルアップのプランがあり、現場のリーダーが「この社員は次のステージに進める」というタイミングを見極めています。

―― マネジネント層の男女比率はいかがでしょうか?

中畠 役員6名のうち、3名が女性です。そのうちの2人は非正規雇用から上がっていった取締役です。1人はシングルマザーで、子育ては卒業したようです。

―― 素晴らしいですね。御社の場合は非正規だったとしても希望があれば正社員になれるということですね。普通の会社ではそこがなかなかうまくいかず、一度非正規に落ちたら二度と上がらせてもらえない。経営者はどうしても同じ能力なら安い給料で買いたたいたほうがいいと考えがちです。だから、産休・育休から戻った女性が元のポストに戻れなかったりする場合も少なくないんです。中畠さんの垣根の無さは、どういう考え方が背景にあるのでしょうか?

産休・育休で社員の能力が落ちるわけがない

中畠 本人の都合で働いていただいた結果が、会社の都合にも合うということが一番いいじゃないですか。本人の都合を会社に合わせて無理に曲げてもらっていたら、会社がいびつになるでしょう。産休・育休などで多少のブランクが生じたとしても、能力はそう落ちるものではありません。自転車に乗れる人が後で乗れなくなることはまずない。それと同じで、ブランクで評価が落ちるのはおかしいというのが基本の考え方ですね。

―― 一般的には能力が落ちると思われているようですがそんなことはない、と。

中畠 ないです。

―― 時代を捉えた感覚をお持ちだなと思うのですが、これからどんなふうに時代が変わって会社の在り方が変わっていくのか。業界や自分の会社がどう変わっていくのか。これからの変化についてお聞かせいただけますか?

中畠 一つには、少子高齢化は止まらないので、人材がフレキシブルに交流していくでしょう。それに対応できるグローバルな人材を育成したり採用したりする必要が出てくると思います。外国の方の幹部というのも視野に入れています。ちなみに、役員3名のうちの3名が女性。2名が非正規雇用からで、1名がシングルマザーで、もう1名は中国人です。中国人のメンバーは取締役であり、工場長です。

―― 今、日本全体が女性活躍を推進して労働人口を補おうとしていますが、その先には外国人を雇う必要が出てくる、と。

中畠 実際、既に外国の方を雇っている会社も多いでしょうし、その可能性は極めて高いでしょうね。

―― そのためにも、御社は動いているということですね。お話を伺う前から「新しい事業のやり方もされているし、非常に新しい考え方をされている」という印象がありました。これは意識的に取り組まれた結果なのかなと思っていたのですが、お話をお伺いすると、昔から当たり前にあった、子どもが身近にいる風景や、労働者の安定と経営の安定がつながっているといった、いわば常識的なことを大切にし、実現されてきた結果なのだなと感じました。

中畠 そう。だから、私がやっていることは、別に新しくもなんともないんです。

―― そう言い切れる、「当たり前のことだ」と言える姿が本当に素晴らしいと思います。

今回お話を伺ったのは……
中畠信一
喜久屋
代表取締役

1962年クリーニング業を営む両親の下に生まれる。 85年、父親が経営する有限会社喜久屋クリーニングセンター(現・株式会社喜久屋)へ入社。98年、代表取締役へ就任。現在、東京・埼玉・千葉にある130店舗の展開およびクリーニングとインターネットを融合した「e-closet(イークローゼット)」、マンション管理会社との事業提携および同業他社とのネットワークを駆使したマンションコンシェルジュでのクリーニングサービス(FCS)、タイ・バンコクでのクリーニングサービスなどを展開中。

小酒部さやかの「取材後記」


取材した工場前に止まった幼稚園バスから「ただいま~」と降りてきたお子さんをママ社員さんが出迎えていた

 取材に訪れた工場には、従業員のお子さんが通う幼稚園の通園バスに止まってもらえるように交渉したそうです。バスから勢いよく降りてきた園児が会社の中に入っていき、おもちゃを出して遊んでいる姿が印象的でした。孫を連れて仕事に来ている社員もいることから、定着率の高さがうかがわれます。

 蒸気が上がる工場内は、スムーズに仕事ができるよう数々の工夫が凝らされ、皆さん、生き生きと働いていらっしゃいました。「子どもが身近にいるのが自然。人を大切にする経営が最善なのは当たり前」。そんなことを実感するインタビューになりました。

●「マタハラNet」とは?

NPO法人マタニティハラスメント対策ネットワーク(通称:マタハラNet)。2014年7月に設立したマタハラ被害者支援団体。少子高齢化が進み労働人口が減っていくこれからの日本で、育児や介護、病気やけがなど様々な状況の人達が働き続けられる社会の実現のため活動している。http://www.mataharanet.org/ 

(ライター/水野宏信、撮影/村上 岳)

小酒部さやか

小酒部さやか

(おさかべ・さやか)1999年、明治学院大学法学部法律学科を中退し、すいどーばた美術学院予備校へ。2005年3月、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科を卒業し、アサツーディ・ケイへ入社。クリエイティブ職アートディレクターとして採用。商品開発、平面広告、パッケージデザイン、CF制作に従事。その後、転職した会社で、契約社員として雑誌の編集業務に従事する中、マタニティーハラスメントの被害に遭う。2014年7月、マタハラNetを設立し、代表に就任。現在は独立し、マタハラ防止コンサルタントとして活動。2015年、米誌『フォーリン・アフェアーズ』に掲載され、女性の地位向上などへの貢献をたたえる米国務省「世界の勇気ある女性賞」を日本人で初めて受賞。2016年1月に『マタハラ問題』(ちくま新書)、11月に『ずっと働ける会社』(花伝社)を発売した。2017年1月1日から、マタハラ防止が企業に義務化されることを受け、職場内でマタハラ防止を周知・啓発する手段の1つとして、2016年9月に「マタニティハラスメント防止DVD」を発売。http://www.mataharanet.org/company/corpmenu3/

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小酒部さやかの突撃インタビュー “マタハラはなくて当たり前”の企業はココが違う!

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