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犠牲なくして回らない会社の構造がマタハラを呼ぶ

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犠牲なくして回らない会社の構造がマタハラを呼ぶ

小酒部さやか【後編】「私がずっとマタハラやパワハラされるような、変な子でごめん。お父さんが誇れる子どもになれなくてごめんなさい」

マタハラNet代表・小酒部さやかさんが企業を突撃取材する連載「小酒部さやかの突撃インタビュー “マタハラはなくて当たり前”の企業はココが違う!」。その連載では「マタハラの実態」についてはあえて触れず、マタハラを許さない企業の工夫について取り上げてきました。さて、こちらの新連載では、マタハラの実態に正面から切り込みます。前回までは3回にわたり、小酒部さんご自身が体験したマタハラについて詳しく伺いました。つらい過去を振り返り、詳しい話を聞かせてくださる取材相手の2人目は、マイさん(仮名)です。マタハラNet.が月に1回開催している「おしゃべりCafé」で、経験したマタハラについて赤裸々に語るマイさんを取材しました。その内容を3回に分けてご紹介します。第1回「マタハラ被害者は“仕事のできない女性”ではない」、第2回「職場先輩の説教電話による心労後に2度目の流産」に続く、第3回です。

不妊治療のため、大好きな父親の死に目に会えなかった


マタハラNetが月に1回開催している「おしゃべりCafé」の様子

 さて、退社3日後は、マイさんの初めての不妊治療の日で、注射を受ける予定だった。病気療養中の父親はこう言ってマイさんを励ました。

 「心配しなくても大丈夫。注射してから見舞いに来いよ。俺、生きているから。マイは、いつも強い子だった。いつも諦めない、頑張る子だ。おまえなら大丈夫だ。だから俺も諦めずに頑張れる」

 マイさんは「父は本当にたくさんの名言を残してくれた」と言う。父のことを話すマイさんは笑顔ではあったが、目には涙があふれていた。実は、父親の様態は急変し、マイさんが不妊治療を受けている間に亡くなったのだ。家に入るなり、父親が永眠している横で、マイさんは泣き崩れて、こう言った。

 「孫の顔を見せられなくてごめん。私がずっとマタハラやパワハラされるような、変な子でごめん。お父さんが誇れる子どもになれなくてごめんなさい……」

 親戚達は初めて事の次第を知り、激怒したという。先輩に抗議の連絡をし、先輩は謝罪に来た。開口一番、「私はそんなことしてないのに。パワハラなんて」と言ったという。マイさんは怒りを抑えることができなかった。マイさんの剣幕に押されたのか、先輩は「償えることはすべてします」と言って帰っていった。だがその後、マイさんへの連絡は一切ないという。

 父親の葬儀に先輩からも花が届いた。マイさんはその無神経さを許すことができなかった。

 私は、泣いて言葉を続けられないマイさんを見ながら、やりきれない思いでいっぱいだった。馬鹿みたいだと思われるかもしれないが、私は「タイムマシンさえあれば」と必死に思っていた。一度だけでいいから、マイさんのために乗りたい、と。やり直すことができるなら、どんなにいいかと。

 でも、マイさん、あなたは何かを間違ったわけじゃない。あなたが悪かったわけじゃない。だから、やり直せないけれど、続けることはできる。最後は、必ずハッピーエンドで終わろう。きっと大丈夫。

周囲に気を使って会社のために動いているのに分かってもらえない

 「妊娠するな」
 「まだ妊娠しないでね」

 これ以上残酷な言葉はないかもしれない。何気ないこの一言が、これほど人を追い詰め、人生を狂わせる。

 「まだ妊娠するな」。では、いつならいいのだろう。マイさんは、ずっとそのタイミングを求めていた。「一人前に仕事ができるようになってから?」「あと5年経ったら?」。でもきっと、いつ妊娠しても「無責任だ」と糾弾されるに違いない。代わりに仕事を担える人がいないから、という理由で。つまり、「いつまでも妊娠するな」ということだ。

 マイさんは、最終的に仕事を失った。そして、不妊治療を続けているが、まだ子どもを授かっていない。かたや、後輩2人は、マイさんの仕事を引き継ぎ、子宝に恵まれた。

 マイさんは仕事に尽くした。子どもが欲しいからと我慢をした。ときには主張したこともあっただろうが、ワガママな女性などではなかったし、仕事好きで他を顧みない女性でもなかった。忌み嫌われるような人柄でもない。

 だからこそ、である。

 マタハラは、「これだけ気使いをして、会社のために動いているのに、会社には分かってもらえない」という構図になっていることが多い。いわば“優しい誰か”が犠牲になっている構図だ。

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