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子どものいじめ なぜ親にすぐ打ち明けないのか

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子どものいじめ なぜ親にすぐ打ち明けないのか

【子どものいじめ・SOS 親ができること 特集】(3)専門家に聞く「子どもがいじめを秘密にする心理」

 子どもの成長はうれしいものですが、保育園から小学校へと進むにつれて、「うちの子は、まわりのお友達とうまくやっていけるだろうか」と心配になることも増えてきます。ちょっとくらいのけんかは、誰もが通る道と思えても、いじめとなると話は別。エスカレートする前に適切に対処をし、いじめから子どもを守ることが重要となってきます。

 もしわが子にいじめを打ち明けられたら。もしくは、打ち明けらないまま、いじめられている証拠を発見したら。親はどうすればいいのでしょう。誰に相談すればいいのか? 子どもにはどう声をかけるべきか? ―――いじめ問題の第一人者である大学教授、現役スクールカウンセラー、いじめに立ち向かうNPO法人の専門家などに取材をしました。第3回では、「なぜ、いじめられた子どもは、親にそのことをすぐに伝えないことがあるのか」というテーマで、子どもの心理について解説します。

【子どものいじめ・SOS 親ができること 特集】
第1回 子どものいじめの実態 学校関係者に聞いた
第2回 読者に聞いた「いじめに親はどう対応したか」
第3回 子どものいじめ なぜ親にすぐ打ち明けないのか ←今回はココ
第4回 親の「聞く力」がいじめの解決を左右する
第5回 いじめ問題「先生のNG対応」 親が変えるには
第6回 いじめから不登校に。でも、また立ち上がれる

 ダイニングテーブルの上に置いた「小4 算数」の教科書の表紙を、アキコはしばらく眺めていた。手に取ってページをめくる。1ページ目、2ページ目はきれいなままなのに、50ページ目が大きくカッターで切り裂かれていた。切り裂きは他のページにも及び、斜めに、真っすぐに、何枚ものページが傷つけられていた。63ページ目にマジックで大きく「クサイ」と書かれているのを見つけて、アキコは思わず教科書を閉じた。

 娘のエリカはいじめにあっている。きっと陰湿ないじめに。

 1カ月くらい前から、エリカはお友達の話をほとんどしなくなった。それまではアキコから聞かなくても、うるさいくらい学校やお友達の話をしてくれたものだ。だんだんと口数が減ってきて、何を聞いても生返事をするようになってきたエリカを見て「そろそろ反抗期なのかな」などと、少し寂しく感じたものだ。

 異変を感じたのは今朝のことだ。

 「朝ごはん食べたくない」
 「おなか痛い。頭もちょっと痛い」

 そう訴えるエリカに「何かがおかしい」と感じつつも、出勤時刻に遅れるのが気になったアキコは、ヨーグルトとシリアルだけなんとか食べさせ、急かすように登校させてしまった。

 朝の出来事が1日中気にかかり、夕飯はエリカの大好物を……と張り切って色々と作ってあげたが「おなかがまだちょっと痛いから」とほとんど口をつけず、エリカは早々に寝てしまった。明日も食欲がないようなら小児科に連れていくべきか。アキコがそう考えていると、担任の吉田先生から電話がかかってきた。

 「エリカさんが、3日連続で算数の教科書を忘れたと言っています。普段は忘れ物が少ない子なので、気になります。ご家庭での様子はいかがでしょうか」

 電話を切った後、そっとエリカの寝室に入った。寝ているエリカを起こさないよう、机の上を探す。算数の教科書は、引き出しの一番下に隠すようにしまわれていた。エリカは算数の勉強が嫌いではない。それなのにどうして、こんなところに教科書を隠しておいたのか。嫌な予感がした。そして冒頭の、切り裂きを発見した。

いじめを本人に問いただしていいの?

 娘がいじめられているかもしれないという事実に、親としてどう対処すべきか。エリカの口数が減った1カ月前から、いじめは起こっていたのかもしれない。エリカの変化に、どうして気づいてあげられなかったんだろう。エリカはもう、母親の私を信用してくれないかもしれない。それに、話したくなかったのなら、本人には知られないように解決したほうがいいのかもしれない。

 まず先に、学校に相談するべきだろうか。でも、「チクった」と言われて、エリカがますますいじめられてしまうかもしれない。それに、担任の吉田先生は新任教師で、真面目そうだが少し頼りない感じがする。

 アキコは算数の教科書を握りしめたまま、ダイニングテーブルの前に立ち尽くしていた。自分がいじめられているわけでもないのに、どんどん胸が苦しくなって、涙があふれて止まらなかった。

 これは、小学生の子どもを持つ共働きママの悩みを再現したショートストーリー。登場人物は架空だが、「教科書を切り裂く」といういじめは、実際に関東近郊の小学校で起こった出来事だ。わが子がいじめにあったときに、悩まない親はいないだろう。日経DUALでは、そんな「悩める親」を代表して、学校カウンセリングを専門とする前・東京都教育委員会いじめ問題対策委員会委員長で、東京聖栄大学の有村久春教授と、現役スクールカウンセラーの栗原さんに話を聞いた。

<次ページからの内容>
・「どうしていじめられたの?」はなぜダメか
・子どもがいじめを「秘密」にしてしまう理由
・打ち明けるか否かにも男女差がある

次ページ 「どうしていじめられたの?」と子ども...

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