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内田良 組体操リスク ケガはつきもので済まさない

『教育という病』著者が指摘 教育現場にありがちな「つきもの論」とは

「学習指導要領」に「組体操」は記載されていない

 ところで東京都教育委員会の「教育的意義、学校経営上の位置付け」とは何でしょう。皆さんご存じの「学習指導要領」。これは、文部科学省が定めた「全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするための、学校教育法等に基づいた、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準」です。現状、日本の学校教育は、学習指導要領に基づいて行われています。

 その学習指導要領に、跳び箱運動(1~6年)やバスケットボール(5~6年)、マット運動(1~2年は「マットを使った運動遊び」でマット運動は3~6年)などは記載されているのですが、組体操はどの学年においても記載されていません。つまり、学校で教えるべきものとして位置付けられてはいないのです。

 いわゆる戦後の小学校の学習指導要領の中で、組体操が記載されていたのは1949年度から1952年度までで、1953年には記載がなくなっています。しかもその後、行われた組体操によって死亡や重度障害の事例が発生し、訴訟にも発展したこともあり、文化としても薄れていったのだと考えられます。

組体操リバイバルって?

 1990年代にはもはや人によっては「“組体操って今もやってるの?”」というくらいの存在だったのですが、2000年代に入り「組体操リバイバル」が起きます。いつ、どこからリバイバルが始まったのかという詳細は分かっていませんが、組体操のタワーやピラミッドが巨大化・高層化しながら、低年齢層にまで広がるようになりました。

 リバイバルによるブームは15年ほど続きました。巨大なものを作れば見栄えが派手になりますし、しかもクラスや学年が一致団結しなければ完成しないと聞けば、教育的に意義を求める教員たちの心はグッとつかまれます。

 組体操の指導の定番は、「土台をやっている子はつらいでしょう。でも、痛いと言ってはいけません。痛がっていたら上に乗る子が心配で乗れないでしょう」です。そして「上に乗る子は、下の土台の子は我慢しているんだから、信頼して安心して乗りなさい」という。お互いが信頼し合うことで成り立つというわけです。こうして組体操が「感動」や「涙」となって結実することがクローズアップされ、分かりやすくピラミッドやタワーの巨大化・高層化が進んでいきました。

どれくらい危険? 組体操のピラミッド

 私が知る限り、小学校でも組体操のピラミッドで9段を成功させた事例があります。

 組体操の指導書には、「小学校では7段くらいまで可能」(戸田克『徹底解説 組体操』)と書かれていますが、7段でも最大の負荷量は2.4人分、小学6年生男子(平均38.3kg)で計算すると、92kg、女子(平均39.0kg)で94kgになります。1人の小学生が、同級生2.4人を背中に乗せるというのは、十分に異常な事態です。それが9段ともなれば最大負荷は3.1人分、6年生男子で119kg、女子で121kgにも上ります。

 高さも問題です。労働の安全衛生についての基準を定めた厚生労働省の「労働安全衛生規則」によれば、「墜落等による危険の防止」のための規則として、次のように定められています。

 第五百十九条 事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆(おお)い等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。

2 事業者は、前項の規定により、囲い等を設けることが著しく困難なとき又は作業の必要上臨時に囲い等を取りはずすときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。

 つまり、労働者である大人でも、2メートル以上のところで仕事をするときには、囲いや手すり、覆い、防網を用意しなければならないのです。でも、組体操リバイバル当時、5~7メートルにも及ぶ高さのピラミッドをこうした補助なく行っていたわけです。

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