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聴覚障がい者から学ぶ本物のコミュニケーション力

ダイアログ・イン・サイレンスリポート(上)20日間で3500人が感動したイベントの発明者 ハイネッケ博士インタビュー

「しー! おしゃべりしよう」不思議なキャッチフレーズだと思いませんか? 音声をシャットアウトしてコミュニケーションを楽しむイベント「ダイアログ・イン・サイレンス」が、この夏、東京・新宿の「LUMINE 0<ルミネ ゼロ>」にて開催されました。無音の空間で、表情とボディランゲージだけで、初めて会う人を含む12人ほどのグループでコミュニケーションするエンタテインメントです。そこで「アテンド」と呼ばれる案内人は聴覚障がい者です。こんな奇想天外なイベントを創造したのはドイツ人哲学者、アンドレアス・ハイネッケ博士。このイベントを通じて、ハイネッケ博士がほんとうに伝えたかったことについて、話してもらいました。子どもたちが、これから世界の人々とコミュニケーションしていくときに、ほんとうに必要な「力」って何なのでしょうか? 博士のお話にはそのヒントがたくさんありました。

「ダイアログ・イン・サイレンス」リポート
(上)聴覚障がい者から学ぶ本物のコミュニケーション力 ←今回はココ!
(中)音声・言葉を使わないから磨かれる「対話力」
(下)障がいがあるだけでは、人は不自由にならない

アンドレアス・ハイネッケ博士
 ドイツ哲学博士。20代のころ、ラジオ局勤務時代、同僚の視覚障がい者と共に働いた体験から、1988年「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を創設。視覚障がい者が案内人となり、暗闇を体験するというエンタテインメントイベントは、日本を含む41カ国以上で開催され、800万人以上が体験。ダイアログ・イン・サイレンスは1998年よりスタート、100万人以上を動員し、日本での開催では20万人以上(2017年8月現在)が体験することになった。

コミュニケーションにほんとうに必要なのは「言葉」じゃない

 誰かに自分のことを伝えたいと思ったときに、大切なことって、なんだと思いますか? 言葉でしょうか? 

例えば、私がしゃべったことをメモを取らずに10分後に繰り返してください、とお願いしても、まず正確に再現することはできないはずです。細かい言い回しや正確な数字などの再現はとても無理。ですが、全体的な印象は残っているはずです。楽しい話だったとか、怖い話だったとか、その部分に伝えたいことの一番大切なことがあると思っています。

 コミュニケーションは、話し言葉だけで成り立っているわけではありません。ほんとうに理解すべきことは、言葉以外の部分にもっとたくさんあります。表情やしぐさ、それらによってほんとうに言いたいことは理解されていくはずです。

 例えば、椅子にだらしなく座って、「お元気ですか? 私は、とっても気分がいいんです。すっごくハッピーです!」と、この顔で言われたら? 表情を見てくださいね。どうでしょう。

 私はハッピーだと言ったし、嘘はついていません。だけど、この顔を見たら、「ほんとうに?」と疑うでしょう。こんな表情では、見えていることと言葉には矛盾ができてしまうんです。ここで分かるのは、コミュニケーションは言葉だけでは成立しないということなんです。

 コミュニケーションではボディランゲージが非常に重要です。「ダイアログ・イン・サイレンス」のアテンドは、言葉以外で自分の思っていることを伝える能力に長けています。そして彼らはアテンドすることによって、皆さんのコミュニケーション能力を引き出し、高めようとしてくれるはずです。これは逆説的に聞こえるかもしれませんが、「ダイアログ・イン・サイレンス」では、耳の聞こえない方たちが、耳の聞こえる私たちに、コミュニケーションのしかたを教えてくれるのです

 「ダイアログ・イン・サイレンス」は、ただ単に耳が聞こえない状態を疑似体験するわけでも、耳が聞こえない人のことを理解するだけのイベントでもありません。それを超えた別の世界を体験してもらうというチャンスなんです。「ダイアログ・イン・サイレンス」は、私たちの日常世界とはずいぶんかけ離れた空間です。だからこそ、お互いをもっと知ろうとするし、学び合おうとします。聞こえる人が聞こえない状態になることで、聞こえる世界と聞こえない世界、両方の様々な側面を知り、つながり合う対話が生まれます。

 今話したことを、例えば簡単な指の動きで表現することができます。人差し指と親指で輪っかを一つ作ります。これが耳の聞こえない人の世界。もう一方の手で同じ輪を作ります。こちらは耳が聞こえる人の世界。その輪をこうしてつなぎ合わせることで、お互いの世界がつながることが表現できます。これは手話ではありませんが、今話したことは、言葉だけでなく、このボディランゲージが伴うことで、より深い意味が伝わるんじゃないでしょうか。

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「ダイアログ・イン・サイレンス」リポート

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