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障がいがあるだけでは、人は不自由にならない

「ダイアログ・イン・サイレンス」リポート(下)対話=ダイアログで大切なのは、まず自分自身を受け入れること

「ダイアログ・イン・サイレンス」リポート(中)では、実際に無音の中でのコミュニケーションとはどんなことなのかをリポートしました。もう一つ、アンドレアス・ハイネッケ博士(「ダイアログ・イン・サイレンス」発案者)が作ったエンターテイメントに、暗闇の中での対話を体験する「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」があります。無音と暗闇、異なる2つの「不自由な環境」を通じて、発案者のハイネッケ博士が本当に伝えたかったことは何なのかをもう一度考えてみます。

「ダイアログ・イン・サイレンス」リポート
(上) 聴覚障がい者から学ぶ本物のコミュニケーション力
(中) 音声・言葉を使わないから磨かれる「対話力」
(下) 障がいがあるだけでは、人は不自由にならない ←今回はココ! 

「サイレンス」も「ダーク」もただその状態を体験するだけのものではない

 「ダイアログ・イン・サイレンス」(以下、「サイレンス」と略)の発案者、ハイネッケ博士は、「サイレンス」よりも以前に、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」(以下、「ダーク」と略)をイベントとして始めました。照度0の真っ暗闇の中を、アテンドと呼ばれる視覚障がい者がガイドし、様々な体験をするエンターテイメントです。白杖で足元を探り、足裏でも床の様子を確認し、風を感じ、音を聞き、壁の様子を手探りしながら進みます。ピクニック広場でのボール遊び、音だけの花火大会、カフェで飲んだり食べたり、海辺にたたずんだり、川にかかる丸太の橋を渡ったり。全く周りは見えません。

 一歩進むのすら怖いような闇の中、頼りになるのはアテンドの声と、一緒に暗闇に入った仲間との言葉がけ、肩にかけてもらう手のぬくもり、「対話」だけ。お互いに「進むほうの右側に網があるよ」「落ち葉がいっぱいの道になったね」といった情報が頼りになります。そしてお互いに触れ合ったときのぬくもりにホッとする。そんな体験をするのが「ダーク」です。

 「サイレンス」では、いかに言葉に頼っていたか、を知りますが、実際に「ダーク」を経験すると、私たちは普段いかに視力に頼っているかを知ります。特に、暗闇の中で食べたり飲んだりした時には、「リンゴジュースの味ってこんなに豊かなものだったのか」と感じたり、「これって、知っている味と食感だけどなんだっけ?」と思い出せなかったり。こうした体験について、ハイネッケ博士はこう分析しています。

 「心理学的にも言われることですが、ひとつの感覚が使えなくなったときに、他の感覚がそれを補完するといわれています。『サイレンス』での聴覚、『ダーク』の場合での視覚を使わないことは、非常に貴重な学びとなります。そしてまた、『サイレンス』や『ダーク』にいるとき、人々はみな平等に制限された環境にいます。年齢も、社会的な地位も、『ダーク』ではもちろん見た目も関係なく、みんなが対等に対話することがいかに大切かを知ることになります」

 平等に制限された空間は、日常世界とは異なります。そうなったときに、普段「弱者」とされる聴覚(あるいは視覚)障がい者のほうが、健常者よりもはるかに自由に行動でき、ある意味優位に立つことになります。「サイレンス」でのゲームではアテンドが参加者を盛り上げたように。「ダーク」の中ではアテンドがこっちだよと道案内してくれたように。たったひとつの条件が変わるだけで、私たちは価値観を変えざるを得なくなります。でも、ハイネッケ博士が「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」「ダイアログ・イン・サイレンス」で伝えたかったことは、このことだけではないのです。


アンドレアス・ハイネッケ博士

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