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夫は妻の余計なおせっかいに、妻は夫の冷たさに悩む

「親のがん」対談 キャンサーペアレンツ西口洋平×がん哲学外来樋野興夫(下)マイナス×マイナス=プラス。自分より困った人に触れると人は元気になる

生きるということ自体が「がん化」への道

西口 がん細胞をおとなしくさせることができるのですか。

樋野 正常な細胞同士というのは、お互いにコミュニケーションを取っています。周りからの働きかけを受け入れたり、周りを抑制したりしているんです。でも、がん細胞は正常細胞と十分にコミュニケーションすることができません。

 不良息子も周囲とうまくコミュニケーションが取れず、次第に周りの人たちが「仕方のないやつだ」「あいつはダメだ」などと言って離れていってしまいます。しかし、周りから関心を持たれたり、親身になってくれる人がいたりすれば更生の道が開けることもあります。

西口 排除してはいけないということですか。

樋野 その通りです。例えばAというがんとBというがんを同じマウスに植えて、片方を取り除いたとき、もう片方の残ったがんはどうなると思いますか?

西口 何も変わらないのではないですか?

樋野 大きくなります。がん細胞同士は互いに抑制物質を出しているので、片方がなくなるとその抑制物質がなくなって、残ったほうが大きくなるのです。

西口 そうなんですか…。安易に排除すればいいというものではないのですね。

樋野 生命現象は異なるものが共存しています。がんの遺伝子と抑制遺伝子、交感神経と副交感神経など、どちらかがなくなったら成り立たないんですね。

 先ほど「がん細胞で起こることは人間社会でも起こる」という話をしましたが、人間社会においても嫌みな人間はいるものだと思います。でも、存在は認めて共存しないといけません。そうしないとバランスがくずれます。嫌いな人間を外して仲良しだけで集まるグループをつくると、最初はいいのですが、そのうち組織全体ががん化します。がん細胞をおとなしくさせるためには、異なる存在を認めて、まずは関心を持つ、手を差し伸べる。これが肝心なのです。

西口 がん細胞に手を差し伸べるというのは、どうするのでしょうか。

樋野 例えば、病理解剖をすると80歳以上の男性の20%に前立腺がんがあり、80歳以上の女性の20%に甲状腺がんがあります。でも、臨床症状は出ていません。「がんの芽」はあるけれども、大きくは成長していない状態ということです。そのように、がん自体はあっても何かで関与できれば、故意に進行を遅らせることができるはずなんですね。

西口 どうやって故意に遅らせるんですか?

樋野 がん細胞に正常細胞の影響を与えるんです。例えば、iPS細胞の研究があります。まだ試験管レベルの話ですが、がん細胞をiPS細胞化(初期化)させると、がん細胞がおとなしくなるという実験結果が出ています。

 私たちの目標は「天寿を全うしてがんで死ぬ」=天寿がんです。37度の体温で生きている限り、DNAには必ず傷がつきます。生きるということは、すなわちがん化への道なのです。それをいかにして遅らせて、天寿を全うするかですね。

西口洋平さん
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キャンサーペアレンツ西口洋平の「親のがん」対談

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