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本城慎之介 楽天副社長から風越学園設立、父の挑戦

【軽井沢風越学園理事長×副理事長インタビュー】(上) カリスマ先生の翌年のクラスは荒れる 必要なのは“子どもが自ら選ぶ”授業

「先週は燃やしちゃいました」 幼児保育現場での衝撃体験

―― 軽井沢町のほかにも、候補地はあったのでしょうか?

本城 那須や高崎、熱海とか……。候補地を考えるうちに、軽井沢という町があると初めて知りました。軽井沢はそれまで訪れたことがなかったのですが、行ってみて、「この町、もしかしたら面白いかもしれない。財界の方たちもたくさん別荘を持たれているし、金曜日の夜に各界の第一線で活躍している方々に講演をお願いすることもできる。この町の雰囲気は働いてくれる人たちもその家族も、もしかして来たくなる町かもしれない」と考えました。そこで「軽井沢で全寮制の中高一貫校をつくろう」と何となくイメージして、自分の家や子どもたちが通う幼稚園・保育園を探している中で、野外・自然保育をしている「森のようちえん ぴっぴ」という園に出合ったんです。

本城慎之介さん。軽井沢風越学園設立準備財団理事長

 そのときの出合いがとても衝撃的でした。2009年に見学に行ったのですが、子どもたちが遊具やおもちゃがなくても、雪の中で体全体を動かして思いっきり遊んでいる。僕は幼少期に同じような経験を北海道でしているから、子どもというのは本来そういうふうに遊べるんだよなということを思い出したんですね。昼食を食べるときには、寒いので子どもたちは立ったまま、焼きおにぎりやその日の献立だった煮込みハンバーグを食べていました。子どもたちが、たき火の周りに集まってきて食べるんです。そのとき、Hくんという当時2歳の男の子が手袋を外して、たき火の周りで丸くなっている石の上にぽんと手袋を置いて焼きおにぎりを食べ出した。明らかに手袋の位置がたき火と近かった。僕は「何か起きるよな」と思いながらスタッフのほうを見ると、スタッフはきちんと見てはいるけれど声はかけませんでした。当然その手袋はぷすぷすと焦げてしまって、Hくんはワーンと泣いている。それでそのスタッフに、「やっぱり焦げますよね」って話をしたら「そうですね。焦げましたよね。でも先週はHくん、燃やしちゃったんですよ」と。「そっか、1週間前に燃やしちゃったからこそ、今回焦がしたんだ。やはり彼は学んでいるんだ」と衝撃を受けました。

―― 「先週は燃やしちゃいました。今回は焦がしました」。それが許される環境ってなかなか都会では考えられませんね。

本城 どちらとも失敗なわけですよね。2回とも失敗できる安心した環境があって、失敗を見守れるような大人の存在がある。失敗したとしても、園と保護者の間でもめたりするのではなく、親も含めてその失敗をちゃんと見届けてあげるようないい関係があるんだなと。やっぱり幼少期にこういう色々な体験や経験を積んで学んでいくことが大切。失敗してもそこから何か得られるものがあったり、もしくは誰かが助けてくれたりという経験を積むことで、人の根っこの部分が育つのではないかなと思いました。

―― その衝撃体験から、当初のエリート養成校をつくるというビジョンが、「遊びと学びへとつながっていく、この人間の自然な育ちを大切にした学校をつくりたい」という風越学園のベースへと大きく変化したんですよね。

本城 僕が考えていた全寮制の中高一貫校というのは、ともすると果実の実の部分だったり、花の部分だったりしたわけです。例えば、6年間という時間の中で、同じ時期に同じような甘さの同じような形の同じような色のりんごがたくさんできますよという形の教育を目指していたということに気づき、僕はそれをすごく薄っぺらく感じるようになりました。そういう道ではなくて、もう少し現場に近いところでしっかりとその人自身の根っこの部分を育むようなことって何なんだろうと思って。そのとき関わっていた色々なプランやプロジェクトを一旦ストップして、7年間幼児教育の現場で毎日のように過ごしていました。そして今回のプロジェクトが始まった。

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軽井沢風越学園理事長×副理事長インタビュー

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