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子どもを非行・犯罪に走らせない「アクセプター」とは

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子どもを非行・犯罪に走らせない「アクセプター」とは

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】(3)1万人以上の犯罪心理を分析、出口保行さんに聞く

 思春期に差し掛かる小学校高学年になると、親から見えない友人関係や行動も増え、訊ねても話してくれなくなったりします。非行や犯罪に自分の子どもが手を染めたらどうしようと不安になる人は、少なくないのではないでしょうか。

 これまで刑務所や拘置所、少年鑑別所などで心理職の仕事に関わってきた、東京未来大学こども心理学部長の出口保行さん。非行や犯罪の背景にあるものを分析した数はこれまでに1万件以上、分析までいかなくても、非行少年などに関わってきた件数を数えれば何十万件になると言います。そんな出口さんにお話を伺いしました。

【年齢別特集 小学校高学年のママ・パパ向け】
(1)ユーチューブや動画投稿のトラブル、注意したいこと
(2)ユーチューブで培われる「発信力」と「自己効力感」
(3)子どもを非行・犯罪に走らせない「アクセプター」とは ←今回はココ
(4)反抗的な態度や性への興味は、犯罪につながる?

子どもの成長に伴い、ママやパパが抱く育児の喜びや悩み、知りたいテーマは少しずつ変化していくものです。「プレDUAL(妊娠~職場復帰)」「保育園」「小学校低学年」「高学年」の4つのカテゴリ別に、今欲しい情報をお届けする日経DUALを、毎日の生活でぜひお役立てください。

要因は親が一番大きいが、「蛙の子は蛙」じゃない

 「1万人以上の犯罪者を分析している立場からお話しさせていただくと、非行や犯罪について家族要因が大きく影響しているということは確かです」と出口さんはまず指摘します。

 でも、暴力団員の子が暴力団員になるかというと、そうではないといいます。「『分化的同一化』といいますが、既にあるものに対して『かっこいいじゃん』『お、いいな、なりたい』と思い、自分が選択していけば『同一化』します(この場合は暴力団員になります)。しかし、ただ親が暴力団員であるというだけであれば『分化的な接触』に過ぎないのです。暴力団員の家にいます、という分化的な接触があっても、『やだよ、おれは』と思って別の選択をすれば同一化はしないんです

 「親など周りの環境に対して、子どもがどんな価値観を持って接するかというほうが大事で、子どもは親の完璧な支配下にあるわけではありません。特に思春期くらいの年齢になれば、価値判断を子ども自身もしています。そのときにある価値観に『やだな』と思って非行に走ることももちろんありますが、親がひどいから自分もグレてやろう、と必ずしも思うわけではないのです。同一化が起こらない限りは、世代を超えて継がれていくことはないのです

 子ども自身の、家庭に対する価値観や判断が影響してくると出口さんは強調します。では、親が適当でいいのかといえば、もちろんそうではないそう。

 「端的に言うと、グレさせないためには、『親が子どもから信頼感を得られていますか?』ということが一番大事なんです。これが『社会的な絆』につながります」

「社会的な絆」が犯罪を止める

 社会的な絆があると、人が犯罪をしようという瞬間、それが大きく作用するといいます。例えば「あー、腹が立つな、あいつを殴ってやりたい!」と思うことは、誰にでもあるかもしれません。しかし、実際に殴らないのはなぜでしょうか。

出口保行さん 犯罪心理学者。東京未来大学こども心理学部教授、学部長。東京学芸大学大学院教育学研究科を修了。法務省に国家公務員心理職として入省し、全国の刑務所・少年鑑別所で勤務し、何十万人という服役者や少年少女たちの話を聞いてきた。内閣府、都庁、警視庁など官公署委員も多数務める。

 「殴ってやりたいという動機と、実際の犯行の間に何があるかというと、何十回とある意思決定と行動化なんです」

 例えば、隣の家に回覧板を届けようと思ったら、何も考えずにパッと行動できます。でも、隣の家に盗みに入ろうと思ったら、「今座っているソファから立ち上がる」かどうかの判断も犯行への一歩になるといいます。

 「『リビングから出る』『靴を履く』その一つ一つの行為すべてに意思決定と行動化があり、『YES』を選択し続けない限り犯行にはつながらないんです。1つでも『NO』を選んだら、犯行は起きません」

 「だからよくテレビなどで解説をするときに『この動機があったからこの犯行が起きたんですよね?』と聞かれるんですが、そんな簡単なものではありません。動機は誰にでもあり得るんです。でも、その後の意思決定と行動化のプロセスの中で、なぜ『YES』を選択し続けてしまったのか、そこが肝となります

 「実際には、犯罪者がなぜ『YES』を選択し続けるかというと、理由の一つは『リスク』、もう一つは『コスト』です」

 リスクとは、それをやることによって検挙されるリスク。捕まってしまいやすさのこと。コストとは、それをやることによって失うものの大きさ。検挙される・されないに関わらず、自分が失ってしまうものの大きさを指します。

 「リスクもコストも高いなと判断すれば、どこかで『NO』を選択し、犯罪は起こりません。リスクはそんなに大きくないけど、コストが高い場合にも、犯罪は起きにくいんです。例えば身近な例でいうと、信号が赤だった場合の道路横断。警察もいなくて、目の前の道路は車もめったにこない、となると、検挙や交通事故の『リスク』が少なくて渡りたくなります。でも、知り合いが見ていたらどうでしょうか。信号無視をためらうのではないでしょうか」

 子どもの非行でも同じだといいます。「だから、リスクが低くてもコストが高ければやらないんです。このコストの部分に一番関係するのが先程の『社会的な絆』です。そこにくるのが親子関係です」

<次のページからの内容>
● 「コスト」を高める決め手は思春期の親子関係
● 重大犯罪者が「先生、ここじゃできません」という理由
● 物理的な距離よりも心理的な距離が大切
● 諦めずに親子の「アクセプター」を模索し続ける
● 親子関係にハウツーやモデルはない
● 親にも失敗はある。そのときに挽回するには?
次ページ 決め手は思春期の親子関係

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