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矢沢心 “試験管ベビー”という偏見との戦い

矢沢心さんと魔裟斗さん夫妻の4年に及ぶ不妊治療の記録。不妊治療で生まれた長女への偏見を払拭したいと奮闘した日々

 おしどり夫婦として知られる女優・タレントの矢沢心さんと、元K-1世界王者・格闘家の魔裟斗さん。2人は、5歳と3歳の2人の女の子のママとパパであり、不妊治療の経験者でもあります。

 前回まで、夫の魔裟斗さんに男性側の視点から不妊治療のことや育児のことを語ってもらいました。今回から再び矢沢心さんにバトンタッチして、1人目を出産してからのことについて語ってもらいます。「産後」第1回は、育児の中で感じたこと、思ったことや2人目の妊娠についてのお話です。

 過去の連載はこちらから

“試験管ベビー”という言葉に負けたくなかった

 長女を出産したときは5日間入院しましたが、あまりにも興奮してしまって、全く眠くなりませんでした(笑)。その間、トータルで4~5時間くらいしか寝ていなかったと思います。それでもつらくはなく、とにかくかわいくて、かわいくて。見ているだけで幸せでした。

 隣で長女が眠っているとき、時々「大丈夫かな?」と思って、胸に指を当てると、心臓の音が伝わってきました。たった1本の指を当てるだけで伝わってくるほどの小さな体だけど、その音は「人間として生きている、命の音だな」と思いました。

 自分の隣で、子どもがちゃんと生きていてくれる。それだけで、こんなに笑顔になれるんだなぁ。そんなことをしみじみ感じていました。

 それは、退院してからも変わりませんでした。夫や私の実家の協力で、私は1カ月くらいの間、ずっと長女のお世話だけに専念することができました。

 初めての赤ちゃんでしたから、普通は慣れない育児に戸惑う時期なのかもしれませんが、私は母乳を飲ませることも、おむつを替えることも、何もかもが楽しくて。大変だったとか、困惑したというような記憶はありません。

 でも、今振り返ると、「健康に、無事に育てなきゃ」と、1日1日必死だったようにも思います。実はその頃、世間では「不妊治療で生まれた子どもはちゃんと育たないのではないか」といった疑問の声もありました。まだ“試験管ベビー”という偏見を持っている人もいたんです。

 私は誰にもそんなふうに思ってほしくなかったし、世の中の人に「不妊治療で生まれた子どもは、こんなに元気なんだ」と思ってほしかった。私は長女以外に不妊治療をして生まれた子を知らなかったので、「この子が不妊治療で生まれた子どものイメージを決めてしまうのかもしれない」と思うと、怖い気がしました。

 それに、夫の実家である小林家は、夫だけでなくみんな体が強いんです。夫のお父さんやお母さんも、孫娘が健康に育つかどうかを気にかけているだろうけど、身内だからこそなかなか聞けないのだろう、ということも感じていました。

 私は体が大きくはないし、胃腸も弱いので、長女はそういう部分を受け継がないでほしい。日本一丈夫な夫の遺伝子を、しっかり受け継いでほしい。長女を健康で元気に育てることが自分の使命だと感じていました。

 だから、母乳を頑張って、常にこの子の隣にいて、ちゃんと見ていよう。そういう気持ちがあったのだと思います。

 ところが、その当時、長女は1週間おきに通院していました。2940グラムで生まれたのに、入院中に黄疸になって、一時期は2500グラムまで体重が落ちてしまっていたんです。それをなんとか生まれたときの体重に戻すということが、その頃の私の目標でした。

 最初の頃は、長女は飲む力が弱く、母乳をうまく飲めませんでした。母乳を哺乳瓶に入れてみても、やっぱり上手に飲めません。病院で用意されたものや自分で用意したものなど、様々な種類を試してみましたが、なかなか量を飲めるようにならず、体重計にのせては「20グラム増えた!」「うんちで減っちゃった?」などと一喜一憂していました。

 それが、あるときから飲み方が変わり、母乳をゴクゴク飲んでくれるようになりました。あのときは、すごくうれしかった。体重が3キロになったとき、これでようやく、スタートラインに立てたと思いました。

 お宮参りやお食い初めなど、育児にはたくさんの行事がありますし、寝返りしたとか、立ち上がった、伝い歩きしたというような成長の節目もあります。そういう思い出はもちろんあるのですが、やっぱり育児でも、不妊治療をしていたときと同じように、一つひとつがステップということが基本にあります。

 長い目で見て、健康で丈夫な体を持って、元気にスポーツができる子にすること。それは、今でも私の目標です。

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