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私が「母性神話」を信じない理由

子育て・教育

私が「母性神話」を信じない理由

山口照美 子どもに必要なのは「母性」ではなく「環境」

 2013年8月に40歳になった。その日は小学校で地域を挙げての防災訓練が行われており、校長として参加していた。朝から外部の人が使うトイレの便器を汗だくで磨き、「まさか40歳で小学校で働いているとはなぁ」と感慨にふけった。

 公募校長の中で、女性は1人、しかも合格当時は4歳と0歳の乳幼児持ちだった。校区である子ども向けの地域行事には、自分の子も連れて行く。もともと、敷津小の教職員は子連れ参加率が高く、少人数校ならではのアットホームさがあった。

 ベビーカーを押す私の姿を、「すっかりこっち側(保護者側)ですねぇ」と喜んで話しかけてくれるお母さんは多い。ゲームをやめない小学生の悩みに答える代わりに、食べない乳児の悩みを話してアドバイスをもらったこともある。一方で、家族を連れていくことを「校長として軽く見られる」と他の校長に心配されたこともある。難しい。

 伝統的な校長になろうとすれば、「民間人校長」としての存在意義が無くなる。そもそも、40歳で乳幼児持ちの校長そのものに前例がない。着任してからの3カ月半、仕事環境の変化と同時に「家庭のやりくり」も大変だった。

「母親としての罪悪感」と戦う

 私が先に家を出る。夫が子ども2人を起こし、朝食を食べさせて保育園に送る。夫は訪問介護や外出介助の仕事を週の半分、自営業の仕事を週の半分ぐらいの割合でしている。夕方に子どもを迎えに行き、夕食を作って食べさせ、風呂に入れて寝かしつける。私は早ければ18時半ごろ、遅い日は22時過ぎに帰る。日曜の夜は夫が介護の仕事に行くことが多く、私が子どもを寝かしつける。

 4月に義母が倒れるまでは、週に3日ほど夫は実家に子どもたちを連れて行き、夕食と入浴を義母に手伝ってもらっていた。今は、頼れない。リハビリ中の義母を見舞いに行き、洗濯物を持って帰り、また持って行くのも彼の担当だ。私は、経済的なサポートを精いっぱいするしかない。


1歳児の「棚から物を出すブーム」とのいたちごっこに疲れて放置気味の部屋。結婚当初に憧れていた「人が呼べる部屋」にはほど遠い

 ここで言い訳がましく「精いっぱい」と書いている自分に気がつき、うんざりする。さっきの文章の合間に「早く帰った日は私も読み聞かせをしている」と書いて、消した。こうして書いてしまえば一緒だが、「母親として、妻として、嫁としての自分」がダメだと感じている自分が現れて、つい言い訳を書き添えたくなるのだ。

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