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金子達仁 保育園で会う父親同士が話をしない理由

イクメンの称号を自分だけのものにしておきたい。そんな本音がチラリとのぞく瞬間

“てぃ”か、“ち”か……、それが問題だ

 「なんで“てぃ”じゃなくて“ち”なの?」

 聞かれて思わず答えに詰まった。考えたこともなかったからである。た、ち、つ、て、と。それがた行。日本語の決まり。なのに、マンガの原本読みたさに日本語を習得しようと燃えていた近所の高校生アロンソ君(たしか、そんな名前だった)は言うのだ。

 「“た”がTAなんだから、当然“ち”はTIじゃなきゃおかしいでしょ? それがどうしてCHIなの? Tに母音がつく行のはずなのに、Cになっちゃってるじゃない! なんでこんなにイレギュラーなの?」

 “porque……es japones”──だって、それが日本語だから。そう答えるしかなかった、20年前のバルセロナだった。

 「なんで“ち”じゃなくて“てぃ”なの?」

 20年後の日本で、あの時とまったく正反対のことをヨメが言っている。言われているのは虎蔵(仮)である。1歳10カ月あたりの時期から、急速にしゃべることへの意欲と能力を高めつつあった虎だが、なぜか、“てぃ”という発音が大のお気に入りになってしまった。

 「おもてぃ、おもてぃ」

 なんだそりゃ? おもちのことか? まだ夏なのになんでだ?……と訝しく思いつつも、とりあえず「おもてぃ」なんて日本語が存在していないのは確実なので、親としては優しく訂正しようとする。

 「てぃ、じゃなくて、ち、だぞ」

 すると、なぜかこれが虎のツボにはまってしまう。

 「てぃてぃてぃてぃてぃてぃ!」──そう連呼して笑い転げる。ト連送が「全機突撃セヨ!」、テ連送は「敵機動部隊見ユ」、でもってトラトラトラは「我奇襲ニ成功セリ」っていうのは、旧海軍航空隊の電信用語。だが、ティ連送となると、さしもの第二次大戦オタクのお父さんにもさっぱりわからん。というより、ヨメの疑問がなにしろもっともである。

 なんで、てぃ、なんだ?


幼児教室でのトラ。髪を切りました

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