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健康な赤ちゃんを授かるなら、顕微授精には慎重に

不妊クリニックで薦められることの多い顕微授精。その安全性に対する不明点を、不妊治療専門の黒田優佳子医師が解説する

不妊治療専門施設の黒田インターナショナル メディカル リプロダクション(東京都中央区)院長の黒田優佳子先生は、「今の不妊治療はともすると妊娠率偏重。実は生まれてくる子どもの健康は保証されていない」と指摘します。その背景を詳しく解説していただきました。

日経DUAL編集部 まずは、基礎知識として、不妊症とはどのような症状なのかを分かりやすく教えていただけますか?

黒田先生(以下、敬称略) 不妊症とは、妊娠を希望する生殖年齢にある夫婦が避妊せずに2年間性行為を試みても妊娠しない場合を言い、専門施設における検査と治療が推奨される症状です。一般に、不妊治療に用いられる技術を生殖補助医療技術(以下、ARTと略す)と言いますが、ARTには主に下記の3つの方法があります。

(1) 人工授精:精子を子宮内に送り込むだけの方法
(2) 体外受精:体外に取り出した卵子に精子が自力で侵入、受精する環境を整える方法
(3) 顕微授精:体外に取り出した卵子に極細のガラス針で人為的に精子1匹を穿刺注入する方法


黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長の黒田優佳子先生

 日本で体外受精が行われるようになって約30年、また、顕微授精が実施されて約20年が経過した現在、不妊症は夫婦5組に1組と言われるほどに増加しています。ARTによる出生児は総出生数の約3%を占めるまでになり、出生児27人に1人はARTで生まれています。ARTは少子化問題を抱える日本の将来を考えるうえで不可欠な医療になったと言えるでしょう。

―― 不妊症の原因は男女のどちら側に原因があることが多いのでしょうか?

黒田 不妊の原因は女性側にあると思われがちですが、実は約半数を男性側が占めます。女性不妊の原因で高比率を占める卵子形成障害(排卵障害)は、現在では種々のホルモン製剤(排卵誘発剤)が開発され、成熟卵子の形成を促せるようになり、治療成績は飛躍的に向上しました。

 その一方、男性不妊の約90%は原因不明の精子形成障害(造精機能障害)です。現在でもホルモン製剤の効果は低く、根本的な治療法が確立されていません。人為的に1匹の精子を卵子に穿刺・注入する顕微授精は高い受精率が得られます。そこで、「1匹でも精子がいれば妊娠できる方法である」と宣伝され、精子の状態が悪い方に対する唯一の対症療法として汎用されています。ほとんどの不妊クリニックでは顕微授精の適用が拡大され、顕微授精がART施行例の70%以上を占めるまでになっています。

慌てて不妊クリニックに駆け込んで、不本意な治療を開始してしまう患者が多い

―― 若いうちに仕事のキャリアを積み、30代も半ばを過ぎてから子どもを持とうと思い始めた。しかし、なかなか授かることができず……。そんな状況に陥って、不妊治療を始めるというカップルが多いようです。

黒田 そうですね。私もそうでしたが、お若いうちは仕事に集中し過ぎて、ご自身の体のことや妊娠についてなかなか気が回らない方が少なくないようです。お子さんを持ちたいと思ったときには既にご夫婦ともに30代後半や40代で、慌てて不妊クリニックに駆け込み、不本意な治療を開始してしまうというケースが多発しています。

―― “不本意な治療”ですか?

黒田 通常、不妊治療は「タイミング療法」から始まり、先ほど申し上げたARTと称する「人工授精」「体外受精」「顕微授精」という順番で進めていきます。体外受精や顕微授精といった高度な治療に進めば進むほど金額も高くなり、精神的・身体的な負担も重くなります。それにもかかわらず、タイミング療法や人工授精で妊娠できる可能性がある場合でも、不妊クリニックによっては体外受精や顕微授精を薦められることも多いと聞いています。

 患者様が不妊クリニックを選ぶ際に重視するのは、やはり妊娠率です。医学的な専門知識がある方ばかりではないので、どうしても妊娠率という「分かりやすい指標」に頼らざるを得ないという実態があるからでしょう。特に、これから不妊治療を始めるという方は、当然ですが「できるだけ若いうちに」という希望をお持ちの方が多く、妊娠率(受精率)が高いと公表している不妊クリニックを選ぶ傾向がありますので、結果として受精率の高い顕微授精が施行されているわけです。

 まずここでお伝えしておきたいことは、日本で初めて体外受精児が生まれたのは1983年、顕微授精児に至っては1995年であり、ARTの歴史は浅いということです。だからこそ、妊娠が不妊治療のゴールではなく、治療で出生した子ども達が元気で一生を過ごせることを長期にわたり見守る必要があります。妊娠率ばかりに目を奪われる現況を早急に見直さなくてはならないことを認識していただきたいのです。

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