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精子の凍結保存 施設により技術の高低に大差あり

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精子の凍結保存 施設により技術の高低に大差あり

黒田優佳子医師/ヒトの精子凍結保存は意外と難しい

連載「黒田優佳子先生の優しい生殖医療講座」第5回です。不妊治療専門施設の黒田インターナショナル メディカル リプロダクション(東京都中央区)院長の黒田優佳子先生に「精子の凍結保存」について詳しく聞きました。

精子を凍結保存する目的は、大きく分けて2つある

DUAL編集部 今年の5月に大阪の病院で患者さんの知らないうちに精子の凍結保存が打ち切られていたというニュースがありました。「精子の保存」について専門家の立場からご意見をお聞かせください。

黒田先生(以下、敬称略) 現在用いられている精子凍結保存技術は、慶應義塾大学の産婦人科が約40年前に開発した技術を根底にしたものです。さて、凍結保存は「精子を取っておくこと」が目的ですが、その用途は大きく分けると2つあります。

 1つ目は不妊治療のため。ご主人が海外にいて、卵子のベストなタイミング(排卵の時期)にご主人が日本に帰ってこられる保証がなかったりする場合などにあらかじめ精子を保存しておきます。また精液中の精子の数が少なく、一回の射精では受精に十分な精子数が得られない場合にも用いられます。

 2つ目は未婚男性も含めて、男性にがんが見つかって放射線を含む化学療法をしなくてはならない場合。これらの治療はがん細胞を殺すことを目的としますが、同時に精巣における精子形成を強く傷害します。このために、治療前に精子を保存するという手段が取られるのです。大阪の事例はこの後者に当たります。

 基本的には前者の、不妊治療の一環で精子を備蓄するという比率のほうが圧倒的に高いのです。ただし、患者様の精子をどのくらいの期間保存するかといったことは、施設によって異なり、明確な基準がありません。世界保健機関(WHO)や日本産婦人科学会が基準を設けているわけでもなく、“施設対患者”という関係で成り立っているという非常に不安定な状態です。日本だけではなく、恐らく海外でも状況は変わらないと思います。

 不妊治療を行う医療側からすれば、できるだけ手間を掛けたくないという理由で「長く保存する」というお約束はしないほうがラクなのです。マイナス196度の液体窒素のタンクの中に、新たな患者様の精子がどんどんたまっていくことになるわけですから。

―― 黒田先生の病院でも、精子の凍結保存はされているのですよね?

黒田 はい。私の病院にいらっしゃる患者様は100%、精子を凍結されます。不妊治療の過程で、いつもはマスターベーションでうまく精子が取れていたのに、卵子を取る手術(採卵)をする前で緊張している奥様を見て、ご主人のほうも緊張して勃起不全になってしまうこともあります。ご主人がインフルエンザになってしまうこともあります。高熱のときの精子の状態はよくないので使えません。また、急に出張が入ってしまうこともあります。

 男性不妊の方の中には、精子の状態が射精ごとに大きく変動する方がいらっしゃいます。採卵当日の精子の状態が悪いこともたびたび経験しますので、治療を開始する前に、高品質の精子を取れたときには凍結して保存しておくという考え方です。

 ただし、一口に精子の凍結保存と言っても、施設によって技術の高低に大きな差があります。患者様にはそこを見極めるための情報収集を怠らないでいただきたいと思うのです。


黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長・黒田優佳子先生

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