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娘の遺言「生まれ変わっても、わたしを見つけてね」

小児科医と病気を持つ子どもたちの物語(3)「娘が引き受けなければならない痛みや辛さをできるだけ共有したい」母の覚悟

 子育てに仕事にせわしなく追われながら日々繰り返される「日常」。ある小児科医がこれまでに出合った光景は、その何気ない「日常」がどれほど幸せなものなのか、立ち止まってかみ締め、向き合う機会を与えてくれます。書籍『君がここにいるということ』(草思社)に収録された5つの物語を、5回にわたってお届けしていきます。
 第3回は、4歳で白血病と診断されて治療を続け、7歳で再入院した女の子の物語です。「お医者さんになりたい」と願い前向きに生きる彼女の姿と、それを支える母親の愛に強く胸を打たれます。

1週間熱が下がらず、白血病の検査で入院

 由香子ちゃんと出会ったのは、私が研修医2年目で、彼女が4歳の頃、幼稚園の年長組さんだった。1週間熱が下がらず、かかりつけの小児科医で血液検査をしたところ、白血病の疑いが濃いということで、大学病院に紹介されてきた。直ちに入院となり、骨髄穿刺という検査をすることになった。

 骨髄穿刺検査とは、背骨に針を刺して骨の中に入っている骨髄を抜き取って、どれくらい白血病細胞が含まれているかを調べる検査であり、白血病の種類と程度を調べるためには、必ずしなければならない検査である。硬い骨に無理やり太い針をこじ入れるのだから、かなりの痛みをともなう。4歳の小さな女の子にはもちろん、医師にとっても、辛い検査である。

 由香子ちゃんは、目がくりくりとした、運動が大好きな女の子で、体操教室で飛んだり跳ねたりするのが大好きだった。最近は、自転車に乗る練習に夢中になっていたという。それが、突然の入院である。自分にいったい何が起きたのか、彼女に理解できるはずはない。彼女の瞳は、不安の色でいっぱいであった。


写真はイメージです

 看護師が勇気づけながら検査を受けるよう説得するのだが、由香子ちゃんは泣いて暴れて、嫌がった。あまりにも激しい拒否反応だったため、由香子ちゃんの気持ちが落ち着くまで、いったん説得を中断することにした。

 検査が終わるまで廊下で待機してもらっていたお母さんに部屋に入ってきてもらった。お母さんにとっても、我が子がこんな検査を受けなければいけないということは、胸がつぶれる思いだったであろう。お母さんは、泣きじゃくる由香子ちゃんを抱きしめ、彼女の耳元で何かをつぶやいていた。激しく泣いていた由香子ちゃんは、お母さんの言葉にじょじょに泣きやんでいった。鼻水をすすりながらも、うんうんとうなずいていた

 「じゃあ、がんばってみる?」とお母さんは由香子ちゃんにたずねた。由香子ちゃんは力強くうなずいた。まわりでその様子を見守っていた医師と看護師たちは、お母さんは由香子ちゃんにどんな魔法の言葉をかけたのだろうか、と不思議に思った。

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小児科医と病気を持つ子どもたちの物語

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