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川上未映子 クリスマスと母と白いセーター[PR]

【第4回】母が必死に働いてくれた姿。わたしにはいつも「ヨイトマケの唄」が鳴り響いていて、それを息子にも求めてしまうのだけれど

 子育てから仕事から夫婦関係から社会問題まで、働く母とはなんと多くの顔を持って生きていることだろう。最愛の息子を育てながら小説家として活躍する川上未映子さんが、素敵も嘆きもぜんぶ詰め込んだ日々を全16回にわたりDUAL読者にお届けします。第4回のテーマは、「クリスマスの思い出」についてです。

 思いだすだけで胸がウッと鳴るような、そんなクリスマスの思い出がわたしにもある……思えば遠くに来たものよなあと、今日もフレシネを飲んで考えた。

 あれはまだ5歳とかそんなだったような気がする。うちはほとんど母子家庭で、母親が文字通り、朝から晩まで働き尽くして、わたしたちを大きくしてくれた。年子の三人姉弟。いったいどうやって生活をまわしていたのかな。もちろん、相当な貧乏だった。

 わたしは76年生まれだから時代としては80年代。よく知らないけど、たしか日本中がバブルで狂乱していた時期だったはず。成人してからこのころの話をすると「嘘でしょ、いつの、どこの話!?」といつも驚かれる。ひとくちに「時代」といっても、いろいろな「昭和」があるんですよね。



ワゴンのなかにみつけた白いフリルの…

 クリスマスが近づいたある日のこと。母とスーパーに行った。買い物をしている母をレジの近くで待っていたわたしは、衣料が山積みになったワゴンのなかに一枚のセーターを見つけた。白くて、銀色のラメがついていて、全体にフリルがあしらわれている。

 うわあ。わたしは一瞬で夢中になって、それを胸にあてて、こんなのが着られたら、こんなのが自分の服だったらどんなに素敵だろうかと想像して、胸がいっぱいになった。

 ハッとして顔をあげると疲れた顔をした母がむこうからやってくるのが見えた。わたしがセーターを持っているのを見たら、買ってやれないことで母はきっと悲しむにちがいないと思った。でも……。

 わたしはとっさにそのセーターをワゴンのいちばん底に隠して、「帰るで」とやってきた母と一緒にスーパーをあとにした。

 それから数日が経って、目が覚めると枕元にプレゼントみたいなのがあった。


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