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川上未映子 受験ていったいなんなのか[PR]

子育て・教育

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【第9回】小学校受験について考えた(前編)/私立派ママの意見に揺れるわたし

 で、そんな彼らに受験について聞いてみると、しかしこれが何の役にも立たない。だってみんなそもそもなぜか頭が良いのだ。地方出身者であれ、都市出身者であれ、多くの編集者は「学校はおろか、その町でぶち抜きで頭が良い子」で、そりゃ努力もしたのだろうけれど、まあ、地頭の延長で気がついたらここにいた、みたいな感じなのだ。

「偏差値なんて」って言えるのは学歴があるからでは

 だからみんな「みえこさん、小学校から私立になんて行かせる必要ないですよ。それより好きなことをやらせてあげたら……」なんてことを言う。彼らは本心で言っているのだ。いつだったか超大手出版社の役員に小学校受験を勧められるという話をしたら、遠い目をして「でもさ、みえこさんはたとえば息子さんにいい大学いかせて、会社員なんかにさせたいわけ? 俺は後悔してるけどね」みたいなことを言ってた。夢があってそれをあきらめるとかなら話はまたべつだけれど、でも、おなじ時間を働き勤め人になるならそりゃ好待遇のところで働くに越したことはないだろう。

「そうは言っても、**さん、おなじ会社員として生きるなら、今の会社でよかったでしょ。まったく勉強しなかったかもしれないけれど、東大出て就職して、今の**さんがあるんじゃん。退職金にふつう〇千万円なんてもらえないよ……」と言ったら「まあそうだけど……」みたいな感じだった。そう、「偏差値教育なんか意味がない!」「人間力!」と言えるのも、そして言って説得力があるのも、東大出身者だったりするのだ。ああ、なんて世界なんだろう……。

 邪魔にならないし、向いてなければやめればいいんだし、環境は大事だし、小学校受験はしたほうがいいよ。いい塾があるよ、あとあとラクだよ。将来、子どもが何かをやりたいときの助けになるんだよ、それに公立では親が何かしてる人だといじめとかあるっていうし……みんながわたしに小学校受験をがんがんに勧めてくれた。なぜ小学校受験をしないのか、何を迷うことがあるのかさっぱり理解できなーいという感じ……。

 うう……まったく興味が持てないけれど、しかし、わたしが興味を持てないことと、息子の将来はべつのこと、なのかもしれないのか……ここは我慢して、受験させるべきなのだろうか……。わたしのものすごく適当でいい加減な心はそれなりに揺れた。一気に話してしまいたいけれどたいがい長くなったので、「公立派」の意見をめぐるあれこれはまた来週。いやあ、人間って生きてるだけじゃだめなんですね。そんなことを思いながら、今日もフレシネを飲むのだった……。

■フレシネのウェブサイトはこちら
honto+でも同コラムを掲載しています。

川上未映子

川上未映子

1976年、大阪府生まれ。小説家、詩人。07年、初の中編小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が芥川賞候補となる。同作で早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。08年に『乳と卵』が芥川賞に輝く。09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞受賞。同年に長編小説『ヘヴン』を発表し、芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞を受賞。13年、短編集『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞受賞。
ほかの著書に『あこがれ』『すべて真夜中の恋人たち』など。『乳と卵』『ヘヴン』をはじめ、著書は海外数カ国で翻訳されている。 プライベートでは、11年に作家・阿部和重と結婚、翌年長男を出産した。

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