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川上未映子 ひとまず受験はさせないことに[PR]

子育て・教育

川上未映子 ひとまず受験はさせないことに[PR]

【第10回】小学校受験について考えた(後編)/「ただ生きているだけで素晴らしい」って嘘でも毎日伝えます

 受験の話にもどると、まあこうしたわたしの方針なら、べつに私立でも公立でもいいじゃないかと思えなくもないのだけれど、しかしやっぱり「公立しかありえない」と決心した最大の理由は、やはり地震だった。通学途中でもし大地震が来たらと思うと、徒歩で通える学校であることは何よりも重要であると個人的に思った。中学生ならまだしも、小学校低学年の子どもが災害に巻き込まれたら、対処のしようがない。連絡もとれず、どこにいるのかも、その安否もわからず……ということを想像すると、私立や公立関係なく、遠い学校に通わせることはできない。そんなことを言うと、私立に通わせてる友人に「わかるけど、考えすぎ。そんなこと言ったら何にもできないじゃん」と言われて、それはそのとおりなんだけど……。

「生きているだけで素晴らしいのだ」と毎日伝える

 人間は、ただ生まれて生きていくだけじゃだめなのか。いや、何をしてもしなくても、どんな人生であれ、「ただ生まれて生きていく」という以上のことはないんだけれど、それでも考えなければならないことが多すぎる。しかし、何よりも健康でいてくれればそれでいい──というとそれまでだけど、こういう社会的なあれこれを考えればとくに、本当にその有り難さが浮き彫りになりますね。もちろん健康な体を持っているだけで現実のすべてを乗り越えられるわけじゃないけれど。でも、やっぱり初心にもどるというか。ただ生まれたとき、あのときを思いだすっていうのは、優しいちからになりますね。

 だから、勉強ができてもできなくても、好きなことがあってもなくても、得意なことがあってもなくても、人間はフェアであること、優しくすること、そして弱い立場の人がいたら守ってやること。それだけがわかれば、とにかく息子のことを全肯定しようと思います。生きているだけで素晴らしいのだということを、嘘でも毎日伝えようと思います。それができるのはたぶん親だけで、そしてその時期というのはきっと限られたものだから。息子の人生だもの。大きくなったら適当にやってくれ。フレシネを飲んで今日もそんなことを考えた。

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honto+でも同コラムを掲載しています。

川上未映子

川上未映子

1976年、大阪府生まれ。小説家、詩人。07年、初の中編小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が芥川賞候補となる。同作で早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。08年に『乳と卵』が芥川賞に輝く。09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞受賞。同年に長編小説『ヘヴン』を発表し、芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞を受賞。13年、短編集『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞受賞。
ほかの著書に『あこがれ』『すべて真夜中の恋人たち』など。『乳と卵』『ヘヴン』をはじめ、著書は海外数カ国で翻訳されている。 プライベートでは、11年に作家・阿部和重と結婚、翌年長男を出産した。

連載バックナンバー

川上未映子のびんづめ日記

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