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山本香苗前副大臣×駒崎弘樹 虐待防げないのはなぜ

子育て・教育

山本香苗前副大臣×駒崎弘樹 虐待防げないのはなぜ

(上) 児相のマンパワーを拡充するだけでは追いつかない

民間ノウハウの活用で児相の負担を減らし問題解決に?

駒崎 児童虐待の件数が増えている背景としてはどう考えていらっしゃいますか?

山本 一つには、核家族化や少子化によって、子どもと家族をめぐる環境が大きく変化していることが挙げられますね。地域全体で子どもをケアする基盤も弱体化しています。

駒崎 子育て層の貧困化という背景もあると思いますし、児童虐待が以前より広く認知されたことによる件数増も考えられますね。

山本 「面前DV」も児童虐待に当たると法改正されたことも数字に現れていると思います。

駒崎 つまり、「目の前で虐待が起きているシーンを見る」ことも虐待と定義づけられたということですね。これによって、きょうだいもカウントされるようになった。実際、暴力的な光景を見ることで脳が損傷されることが分かっているそうなので、社会的病理がより正しい数値として顕在化してきたということだと僕は思います。

山本 そうですね。

駒崎 児相の職員を増やそうとするだけでは、とても追いつかないということがよく分かりました。

 ならば、児相の機能を分散化することはできないのでしょうか? 例えば、軽度の家庭訪問は地元のNPOに委託するとか。うちなんて、年間300万円とかで最低限の人件費でも委託されたら喜んでやるんですけど。

山本 私としてはすぐにでもお願いしたい気持ちです。

駒崎 ぜひ民間のノウハウを活用していただきたいです。こういった提案をこれまでしてきた感覚で言うと、児相を取り巻く行政全体がまだまだ閉鎖的な感じもするんです。「個人情報を簡単には渡せない」とか「児童相談所が責任持って見るべき問題です」といった反応を返されることが多くて。責任感の現れだとは思うのですが、もう少し課題解決を社会全体でシェアすることができたらなぁと思っています。

山本 そうですね。児相が歴史的に抱えてきた矛盾として、「介入」と「支援」のどちらの機能も担ってきたという点があります。子どもを守るために時には親から子どもを引き離す「介入」と、家族関係を守る「支援」を同じところが担うというのは、家庭も戸惑うし、児相のスタッフにとっても重いストレスになっているんです

駒崎 「今ここで親子を引き離すと、後からの関係性構築が難しくなる。とりあえずは様子を見よう」と手を引っ込めてしまうわけですよね。

山本 はい。そこで、平成16年の児童虐待防止法などの改正で、市町村も虐待の通告先となり、市町村と児相の二重構造で対応することとなりました。しかし、役割分担が分かりにくい。現在、厚労省で、市町村と児相(都道府県)の役割分担を明確化する方向で検討が行われています。

駒崎 いい流れですね。

山本 同時に議論されているのは、「官だけでは絶対に解決できない」ということです。また大阪府の例になりますが、大阪府では民間のNPOなどに安全確認の一部を委託できるように来年度予算案を編成しているんですよ。例えば、問題がありそうな家庭にはまずは傾聴ボランティアに行ってもらって様子を伺い、何か問題が起きそうな芽を発見したら、児相に引き継ぐという具合に。

駒崎 うまくいきそうな連携ですね。

山本 家庭にとっても受け入れやすくなると思うんです。いきなり「ジソウがきた!」となると、家族に緊張が走って、かえって追い詰めることになるリスクもありますし。虐待を引き起こしそうなハイリスク家庭へのアプローチだけではなく、その前の段階の「子育てに不安を抱えている孤立家庭」に対する支援が必要だと思うんです。民間の力をどんどん借りて、傾聴ボランティアや家事サポートで家庭を支援していけば、結果として虐待の芽を摘むことになるはずですから。

駒崎 僕もそう思います。

山本 現行制度でもできる仕組みなんですよ。ただ、各自治体では体制が整っていない。うちの地方議員には「官民連携が重要だ」と常々言っています。

駒崎 よかったです。児童福祉法の改正のこの時期に、児相の機能分担についても議論になっているというのは朗報です

山本 昨年9月、塩崎厚労大臣は衆議院厚労委員会で「児童福祉法の改正を目指す」と明言しました。当初、小さな改正だけにとどまる雰囲気でしたが、大臣の強いリーダーシップで、今まで課題と認識されつつなかなか手が付けられてこなかったことについても精力的に議論がなされていると思っています

駒崎 そうだったんですね。絶対にやるべきでしたよ。今の児童福祉政策にはバグがたくさんあると思いますから。

山本 はい。バグどころか、OSを変えるくらいの気概でやっていきたいと思っています。

 ――続く次回は、虐待を発見したときの通報における問題や子どもの貧困対策に迫ります。

山本香苗
1995年外務省入省。96年外務省在外研修でトルコ・イスタンブール大学大学院。98年在カザフスタン大使館(在キルギス大使館併任)。2001年に外務省を退職し、参議院議員選挙を最年少で初当選。14年に厚生労働副大臣就任。現在、公明党政策審議会会長、公明党女性局長、公明党女性委員会「子ども・若者支援プロジェクトチーム」座長、大阪府本部代表代行、兵庫、京都、滋賀、和歌山、奈良、福井県本部顧問。

(文/宮本恵理子 撮影/鈴木愛子)

駒崎弘樹

駒崎弘樹

1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。2010年からは待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。「おうち保育園」モデルは、2015年度より「小規模認可保育所」として、政府の子ども子育て新制度において制度化され、全国に広がった。2014年には、これまで保育園に入れなかった医療的ケアのある子ども達を中心とした障害児を専門的に預かる「障害児保育園ヘレン」を東京都杉並区に開園。2015年4月から、医療的ケアのある障害児の家においてマンツーマンで保育を行う「障害児訪問保育アニー」をスタート。政策提言や担い手の育成を行うため、2012年、一般財団法人 日本病児保育協会、NPO法人 全国小規模保育協議会を設立、理事長に就任。2015年、全国医療的ケア児者支援協議会を設立、事務局長に。
 公職としては、2010年より内閣府政策調査員、内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員、内閣官房「社会保障改革に関する集中検討会議」委員などを歴任。 現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員を務める。
 著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)、『社会を変えるお金の使い方』(英治出版)等。翻訳書に「あなたには夢がある」(英治出版)。一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2カ月の育児休暇を取得。

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