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川上未映子 「主人」という言葉が心底嫌い [PR]

【第4回】わたしは「主人」アレルギー。「嫁」も気が滅入る。言葉をもっと大切に!

 そんなだからわたしは、例えば同業者との会話のなかで「嫁」とか「主人」とかっていう言葉が出ると、「わたしに主人はいません」とか「それはありえませんよ」と、別に言いたくないけど、その場で即座に指摘するようにしている。

ママ友にも子どもにも、しつこく「夫は」と言い直す

 でもそれは、まがりなりにもある種の言論空間だからという認識もあるわけで、たとえばママ友たちとの会話のなかでそんなことを言ったら、よくわかんないけどモンスターペアレントならぬ、「モンスターママ友」になってしまうのもよくわかる。でも、やっぱりおかしいと思う気持ちは抑えられず、また、わたしの矜持でもあるから、「夫は」というふうに、文字でいうと極太ゴシック体ではっきり言い直したりするんだけれど、そんなの誰も気づかないし、何にもならない

 ジェンダー教育にかんしてもそう。「男の子は男らしく」「女の子はおしとやかに」なんて、ごく普通の価値観で、みんなにこにこ疑いもせずに、認めてる。「男が女を守るんだ!」「女は弱いからな!」とか、3歳くらいからふつうにがんがん仕入れてくる。機会があればそのつどつどに、ほかの子どもたち&保護者みんながいるまえで息子に「男も女もないよ。好きにすればいいし、なりたいものになればいい。男が女を守るんじゃない。そのとき余力のあるものが、困ってる人を助けるし、守るのだ」とはっきり言い続けてきたけど、「あー、やっぱ作家特有の、変わった感受性ですよね」っていうふうに受け止められてるのが、痛いほど伝わってくる。とほほ……どこにいけばあるんだ、主人も、嫁も、ない世界……

 自分の配偶者のことは「夫」でいいじゃないですか。旦那も主人もやめようよ。そして夫は「妻」と呼びましょうよ。あるいは、名字で呼びましょうよ。名前で呼びましょうよ。そして相手の配偶者のことは──わたしも過去、苦し紛れに「夫君は」なんて言うようにしてたけど「ふくん?」「そう、夫君は」「なにそれ」「……だから、旦那さんのことだよ」みたいな感じでほとんど通じない&不毛だったので、呼ぶ必要があれば、◯◯さんって、名前で呼ぶことにしましょうよ……。

 小さなことだけど、そうやって毎日使う身近な言葉から、子育ての関係性や夫婦間のバランスが変わっていくこと、本当にあるんだもの。今日もフレシネを飲んで、そんなことを考えた。

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川上未映子

川上未映子

1976年、大阪府生まれ。小説家、詩人。07年、初の中編小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が芥川賞候補となる。同作で早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。08年に『乳と卵』が芥川賞に輝く。09年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞受賞。同年に長編小説『ヘヴン』を発表し、芸術選奨文部科学大臣新人賞、紫式部文学賞を受賞。13年、短編集『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞受賞。
ほかの著書に『あこがれ』『すべて真夜中の恋人たち』など。『乳と卵』『ヘヴン』をはじめ、著書は海外数カ国で翻訳されている。 プライベートでは、11年に作家・阿部和重と結婚、翌年長男を出産した。

連載バックナンバー

川上未映子のびんづめ日記2

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