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野田聖子 「医療的ケア児」受け入れ体制にハードル

野田聖子大臣インタビュー(上)幼児教育の「無償化」ではなく「義務化」を目指したい

駒崎 なんと。

野田 たまらなかったですね。私は帝王切開で出産したので分娩中も意識はハッキリしていました。生まれたはずなのに泣かないな、ダメだったのかなと思っていたら、「にゃー」って猫みたいな産声が聞こえてきました。それからすぐに息子は手術室に送られちゃって、NICUに1年弱、その後はナースステーションの目の前で管理されていました。退院したのは2歳3カ月のときです。

駒崎 そのマーくんのような子どものことを指す「医療的ケア児」という言葉が浸透してきたのは、ごく最近のことです。ひと昔前であれば助からなかったかもしれない命が、医学の進歩によって助かるようになったのは素晴らしいことです。一方で、「医療的デバイスと共に生きる子ども」の増加という変化ももたらしていて、医療的ケア児の数は10年前に比べて約2倍、現在1万7000人ほどにまでなっています。新しい存在ゆえに、制度がまったく追いついていないという現状があります。手厚いケアや教育をしていきたいと親や周りの大人が願ったとしても、それをかなえるインフラが整っていないんですよね

野田 おっしゃる通り。「お金があるから育てられるでしょう」とよく言われるけれど、例えば保育園に入りたくて「いくらでもお金を積めますよ」と言ったところで、受け入れ先はない。保育園に落ちる以前の問題でした。「だったら、ベビーシッターをつけたら?」とおっしゃる方もいますが、私はやはり子どもは同年代の子どもたちと遊んで刺激し合いながら成長をしていくのが本来の姿だと思っています。知的障がいのある子どもだって、見えを張るんですよ。実際、家ではまったくオムツが取れなかった子が、保育園に通い始めて数カ月でパンツデビューすることだってある。

羽生 障がいのある子どもを育てる日常をブログでも公開されていますが、「そんな勇気を普通は持てない」「ベビーシッターに任せればいいのに」といった否定的な意見に対してはどう感じてきたのですか?

野田 勇気もへったくれもなくて、ただ目の前の処理で忙殺されているだけです。「ベビーシッターに任せれば」という意見に対しては、先ほど申し上げたように、普通の子どもが育つのと同じ環境を与えたいという思いだけでした。

医療的ケア児は現行の法律の隙間事案

駒崎 まさに野田さんが実感されてきたように、現実として未就学の医療的ケア児の預け先はありませんし、特別支援学校に進学してからも「医療的ケアが必要な場合はお母さんがついてきてくださいね」という条件があるんですよね。

野田 法律としてもずっと隙間事案だったのよね。

駒崎 僕たちが東京・杉並区に医療的ケア児も預かる障がい児専門の保育園「ヘレン」を開園したのが2014年9月。マーくんの預け先を探す苦労も経験されていた野田さんと当時の荒井聰・元国家戦略担当相が中心となって、翌2015年に超党派の勉強会「永田町子ども未来会議」が立ち上がったんですよね。厚労省や文科省への呼びかけで支援の検討が始まって、2016年に「医療的ケア児」という言葉を盛り込む形で改正障害者総合支援法が成立した。これは本当に大きな前進でした。これによって、自治体は医療的ケア児を支援しなければいけないという努力義務が課されました

野田 今でも医療的ケア児は、重症心身障がい児や肢体不自由児とも違って、単に「変な器具を付けている子ども」という見られ方になっている。普通学校にも特別支援学校にも行き場がない隙間事案で、保育園も幼稚園も受け入れ先がない。駒崎さんはその課題解決に大きな使命感を持ってヘレンを作ってくれたわけですが、なかなか後が続かないのはやっぱり運営が大変だからです。つまり、経営が成り立たない。痰を垂れ流したり、ごはんは胃に直接あげなきゃいけなかったりとすごく手がかかるのに、立ったり歩いたりできたという時点でガクンと補助金の額が下がる。現行の制度に医療的ケア児を無理やり当てはめるだけでは経済的にやっていけない。それが現状でしょ?

駒崎 おっしゃる通りです。マーくんの場合、入園した当初はずり這いでしたが、そのうち立って歩けるようになって「やったー!」と皆で喜んだ瞬間、補助金は3分の1に減って、ド赤字になるという(苦笑)。

野田 それを私は分かっていたから、本当に気の毒になってしまって退園させた経緯があるんですよね。かといって他の保育園にも入れないので、しばらくは看護師さんを自費でつける条件で承諾していただいたポピンズさんに預かってもらっていました。

駒崎 本当に綱渡り状態で、皆さん苦労されていますよね。

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