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野田聖子 「医療的ケア児」受け入れ体制にハードル

野田聖子大臣インタビュー(上)幼児教育の「無償化」ではなく「義務化」を目指したい

意識レベルでの働き方改革には挑戦したい

野田 私がやったというより、長いこと取り組んできたみんなの努力の結実です。夫婦別姓の議論はもともとフェミニズム的な主義・主張から始まったものでしたが、私たち以下の働いている世代にとっては「旧姓を使えない煩わしさから解放されたい!」という現実的な問題。大臣職でも女性は二つの姓を書類で使い分けなければいけなかったり、意味がないなと思っていました。変わるなら官僚から手本を見せるほうが民間も追随しやすいはずだと、特許庁や裁判所も足並みをそろえて決めていった結果を早く発表できたのはよかったですね。

 今後はマイナンバーカードも旧姓に対応していくので、特に女性にとっては利便性が高まると思います。今年の秋ごろからは、ネット上で書類申請ができたり、必要な情報の確認ができたりするワンストップサービス「マイナポータル」も始まります。日経DUAL読者のような、平日にはなかなか役所に行けない若い現役世代にはぜひ活用していただきたいですね。

駒崎 マイナポータルを推進するための委員会にも参加させていただいていました。

野田 どんな使い方が便利か、ぜひ中身についての意見をどんどんください。制度やサービスは使われないと意味がないので。

駒崎 分かりました。このマイナンバーカード関係も含めて、野田さんがトップを務める総務省って本当に職掌範囲が広いですよね。

野田 広い、広い、消防もやっています。

駒崎 総務大臣としてこれだけはやりたい、と決意されているものはなんですか?

野田 欲張りだからいくつかあるんですけれど、まずは働き方改革をより本質的に進めること。テレワークが思ったより浸透していないのは、機器を導入するといった形から入ってしまっている企業が多いのかなと。本当は形ではなく思想から入るべきで、「いつでもどこでも、仕事ができていれば仕事なのだ」という意識改革が大事なはず。全員一律に9時から5時までオフィスの席に着くのが仕事、という発想から脱することからまず始めないといけませんよね。既存の概念を壊すための有効な道具としてテレワークという手段があるのに、今は手段が目的になっているところが多いように見えます。意識レベルでの働き方改革には挑戦したいですね。

駒崎 ぜひ。

幼児教育の「無償化」ではなく「義務化」

野田 もう一つは、特に地方でのシェアリングエコノミーの推進。人もモノも減って苦しんでいる地域を支えるアプローチとして非常に期待できると思っています。その主役になるのもきっと女性。職と生活が深くコミットする分野だと思うので。あとは、これはずっと私が言ってきた考えですが、幼児教育は義務化させたい。これができれば、全部解決ですよ。保育園落ちた・落ちないといった待機児童問題は即解決ですし、何より私が大事だと思うのは、親以外の社会の目が幼児期の育児に介在することで、発達障がいの早期発見や虐待の防止につながるんです。

駒崎 幼児教育の「無償化」ではなく「義務化」なんですね?

野田 そう。「無償化」というのは、お金の問題だけ解決しているイメージでちょっと嫌だなぁと。タダでお得ですよ、みたいなね。義務化というのはまったく違う発想で、「この国の将来を支える人材をしっかり社会で育てていこう」という意志表明ですよ。障がいを持っている子どもたちも含めてすべての子どもたちがしっかりと教育を受けられるというのが、本来あるべき世の中ではないかと思います

 財源は保険だなんだと弱気に構えなくてよくて、小中高の教育と同じように直球で税金でいくべきです。幼児教育だけ保険に頼る、というのも聞こえはいいかもしれませんが、結果的に現役世代だけに頼ることになってしまうので、現役世代がこれから減っていく人口構造の中では安定的財源とは言えないと思う。やっぱりきちっと税金で賄って、全世代の将来に返ってくる投資と位置付けたほうがい。これは長く抱いている私の信条でもあって、一昨年の総裁選でもそれを公約に頑張ろうとしたんだけどね。

駒崎 おお、まさに総裁選というワードが出てきましたが、僕としては野田さんに早く日本初の女性総理になってほしいと切望しています。

野田 今回入閣してふと気づいたんですが、私と上川さん(上川陽子法務大臣)は事前に総理から「女性枠」だと言われていなかったんです。つまり、あらかじめ女性が就くポストとして2~3枠用意しておいて、誰かを当てはめるということではなかった。おばさんは女性じゃないのかしら?と思ったけれど、どうやら「普通に任命したらたまたま女性だった」ということだったらしい。私はそれが理想だと思っていたので、うれしかったですね。

 女性の人材は在庫が少ないのに、無理やり重職に置いて苦労させて「やっぱり女性はダメだ」なんて評価されてしまったら逆効果じゃないですか。自然に肩を並べられるというのがやっぱり理想ですよね。周りを見渡しても、私よりずっと女性らしい男性大臣もたくさんいるし(笑)。私たちのように、50代、60代になってからではなくて、もっと若いうちから男性と自然に肩を並べて無理なく活躍できる女性たちがもっと出てきてほしいですね

――「下」編に続きます。

(文/宮本恵理子 撮影/鈴木愛子)

駒崎弘樹

駒崎弘樹

1979年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、「地域の力によって病児保育問題を解決し、子育てと仕事を両立できる社会をつくりたい」と考え、2004年にNPO法人フローレンスを設立。日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始、共働きやひとり親の子育て家庭をサポートする。2010年からは待機児童問題の解決のため、空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。「おうち保育園」モデルは、2015年度より「小規模認可保育所」として、政府の子ども子育て新制度において制度化され、全国に広がった。2014年には、これまで保育園に入れなかった医療的ケアのある子ども達を中心とした障害児を専門的に預かる「障害児保育園ヘレン」を東京都杉並区に開園。2015年4月から、医療的ケアのある障害児の家においてマンツーマンで保育を行う「障害児訪問保育アニー」をスタート。政策提言や担い手の育成を行うため、2012年、一般財団法人 日本病児保育協会、NPO法人 全国小規模保育協議会を設立、理事長に就任。2015年、全国医療的ケア児者支援協議会を設立、事務局長に。
 公職としては、2010年より内閣府政策調査員、内閣府「新しい公共」専門調査会推進委員、内閣官房「社会保障改革に関する集中検討会議」委員などを歴任。 現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員を務める。
 著書に『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』(英治出版)、『働き方革命』(ちくま新書)、『社会を変えるお金の使い方』(英治出版)等。翻訳書に「あなたには夢がある」(英治出版)。一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2カ月の育児休暇を取得。

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