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[PR]現地を歩き、「見て」「聞いて」「感じる」武蔵野巡検

子育て・教育

 70年以上の歴史を持つ桐朋女子は、『こころの健康 からだの健康』をモットーに、創造力を育む教育に取り組んできた。特に社会科では、実際の社会の現状に問題意識を持ち、自ら学習していく「問題解決型」の学習を実践。「見る」「聞く」「まとめる」教育を大事にしており、自ら体験したことをレポートにまとめる過程を繰り返すことで、自ら考える力を養おうという取り組みを進めている。その入口となる武蔵野巡検を通して、同校の取り組みを紹介しよう。

自分の頭で考えながら歩き、問題点を見つける

 「武蔵野巡検」は何十年にもわたって行われてきた同校の伝統的行事だ。入学したばかりの中1生を対象にしており、社会科の学習とはどんなものかを体験的に学ぶ場でもある。

 武蔵野巡検に出る前に、生徒たちは地理授業で地図について学習。地図記号や方位、等高線等の地形図の基本を学び、学校周辺の1万分の1の地形図を手にして、学校の屋上から見える景色を観察。武蔵野丘陵、高速道路など目に映る景色を、16方位を書き入れたノートに書き写す。次に、地形図とノートを見比べる作業を行った。

今日歩くコースを入念に確認。学びの準備をする

 武蔵野巡検は4月23日、好天の中でスタートした。調布駅に集合した生徒たちの手には、事前に配られたしおりと、1万分の1の地形図。ここからクラスごとに深大寺まで約5㎞の道のりを歩き、「見る」「聞く」「考える」を体験するのだ。

 出発前、社会科担当の渡邉先生からは「自分の頭で考えること」「何でだろうと疑問を持ちながら歩くこと」という心がまえが示された。早速調布駅周辺の商業ビルを見回し、「なぜそこにビルがあるのか」という問いかけがなされる。駅前から路地に入ると景色が一変、アパートやマンションなどの住宅が増え、少し歩くと畑が見えてきた。ここで立ち止まり、先生が説明を始める。元々の畑だった土地が、手間のかからない植木の畑になり、駐車場、アパート・マンションへと変わっていくこと、地価が高い駅前はビルが多いなど、土地利用方法の変化を説明。さらに後継者問題など農家の環境が変わっていることや、生産緑地制度など、キーワードをフリップで示しながら説明を加えていく。生徒たちはしおりに気づいたことを書き込みながら、先生の話に耳を傾けている。

先生の話を聞き、熱心にメモを取る生徒

 次に足を止めたのは農園。苺のビニールハウスが建ち並ぶ中で、作っている作物の種類や栽培方法、出荷場所などの説明が行われた。ちなみに巡検の前には、地理担当の先生方が見学先を訪ね、細かい聞き取り調査を実施。それを社会科の先生同士で共有し、現場での説明に役立てているのだという。露地栽培と促成栽培では、畝を作る方向が違うこと、苺のビニールハウスでは一緒に蜂を飼育し受粉させているなどの栽培の工夫も紹介された。

苺ハウスの前で地域の農業実態の話をする

 布田駅を経て、新旧の甲州街道へ。「道の広さや車の量、両側の様子を比較してみましょう」と渡邉先生。「新しい甲州街道の方が、道幅が断然広い」「植木屋、石材屋、瓦屋など、旧甲州街道には昔からの店が多い」など、生徒とのやりとりもどんどん活発になっていく。

 さらに休耕水田と畑に転用した地域で、水田を止めた理由や、多品種少量栽培のメリット、食の安全などについて言及した後、武蔵野台地に入り、関東ローム層の崖線や湧き水を観察。中央高速自動車道路では輸送の目的や弊害などについて話し合った上で、3人1組になり、歩道橋から1分間に通過する上り、下りの車の量を計測する試みも実践した。

 3時間余りで深大寺に到着。2017年9月に国宝に指定された白鳳仏・釈迦如来像を拝観し、武蔵野巡検は終了した。  

関東ローム層の崖線や湧き水の観察。調布の地形、地質について知る
最後は深大寺。「見て」「聞いて」「感じた」ことを思い起こす

   参加した生徒たちに話を聞くと「疲れたけど、楽しかった」と言う声が返ってきた。印象に残った内容としては、「苺のビニールハウスで、蜂を一緒に飼って受粉させているとは知らなかった。これから苺を食べる度に、そのことを思い出すと思う」「水田が減っているのは、生活排水などの水の汚染が影響していることを知った。こんなに水田が減っているのに、日本では米が余っているのは何故なんだろう。調べてみたい」など、先生の問いや自分が見たこと、感じたことをきちんと受け止めている様子がうかがえた。武蔵野巡検後の授業では、実際に現地に行った際に「見て」「聞いて」「感じた」ことを確認し、しおりを完成。それをもとに各自でテーマを決め、原稿用紙8~15枚のレポートにまとめる作業に取り組むという。

 渡邉先生は、武蔵野巡検の目的を以下のように語る。
「生徒たちに、調布の町を知ってもらいたいという思いが大きいですね。普段当たり前に目にしている町の様子も、じっくり観察してみると実は知らないことがたくさんあります。また、毎年ほぼ同様のコースをたどっていますが、ここ数年に限っても畜産農家の見学ができなくなったり、畑が減ったり、逆に休耕地が復活した等の変化が見られます。生徒たちには、こうした町の変化に気づける目を養って欲しい。そして『その変化は何故起きているのか』という疑問や、好奇心につなげて欲しいと思っています。社会科は現実の社会を理解し、自分なりにどう考え、行動するのかを見出していく教科です。この武蔵野巡検が、生徒たちにとって現実や社会を考えるきっかけになってくれればと思っています」

段階的に進められる社会科見学を通して、考える力を体得

 武蔵野巡検に始まる同校の社会科見学・レポート学習は、その後も段階を追いながら進められていく。中1後期に行われるのが、日本橋や銀座など東京の都心部を見学する「都内見学」。後に銀座と地元の商店街を比較してレポートを書く。この2回の見学体験をもとに、生徒たちはさらに春休みに、各自で地元の郷土資料館を訪ねたり、お年寄りの話を聞いたりして郷土の歴史について調べ、3つめのレポートをまとめる。

 中2後期には、江戸東京博物館を見学しレポートを提出。さらに中3前期には、自分でスクラップした新聞記事をもとに「新聞レポート」を仕上げる。後期にはコース別社会科見学を実施。東京地方裁判所での裁判傍聴コース、工場等の生産現場コース、靖国神社や千鳥ヶ淵戦没者墓苑等の平和学習コース、東京証券取引所等の金融コースなど6コースが毎年用意され、生徒自身が興味関心を持ったコースを選び、見学した上でレポート作成に取り組む。

 事前学習→見学・体験→レポート作成を繰り返す中で、生徒は「何をレポートのテーマにするか」「どんな情報が必要で、どうやって集めればいいのか」「見学を通して自分は何を見、どう感じたか」など、「自ら考える力」を自然に身につけていく。さらに高校では、発表学習が加わり、レジュメづくりやプレゼンテーション能力などが磨かれていくという。「中学・高校時代は目立たなかった生徒が、大学のゼミ長を務めているという話もよく聞きます。また、起業等の道を選ぶ卒業生も少なくありません。桐朋女子の『自主学習』が確実に身についているのを実感しますね」(渡邉先生)

 その第一歩となる武蔵野巡検は、生徒たちに強い印象を残したに違いない。

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