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小島慶子「ああはならないで」教育熱心な親の本音

子育て・教育

小島慶子「ああはならないで」教育熱心な親の本音

学歴や職業が人の値打ちを決めるというメッセージを、無意識のうちに子どもに伝えていないか?

 すでに各方面で話題になっていますが、教育熱心なDUAL読者にぜひともオススメの本があります。姫野カオルコ『彼女は頭が悪いから』(文藝春秋)。

 2016年に起きた東大生による強制わいせつ事件を題材にした小説です。フィクションとはいえ、事件のルポなどに照らすとかなりリアルな設定であることがわかります。男子学生たちがいわゆるヤリサーといわれるセックス目当てのサークルを作り、東大生と知り合いたいという女子学生たちの気持ちにつけ込んでセックスしたり、性的な搾取をする……。そのメンタリティーや刷り込まれた価値観は、何も事件を起こした学生たちだけに限ったものではありません。大事に育てたわが子がもしもそんな事件を起こしたらと想像して、不安になった人もいるのでは。

「学歴は人を判断する物差しの一つ」という環境もある

 登場人物の一人は、東大生である自分に寄ってくる女は“下心”があると考えて見下しています。中でも、偏差値の低い大学の女子学生はモノ扱い。酒宴を盛り上げるために呼びつけて、おもちゃにする。そうしても構わない相手だと思っているのです。女子と知り合いたいという自分の下心は棚に上げて、相手を下に見る態度は傲慢というほかはありません。

 東大生の彼氏は自慢できるし、結婚すれば安定した暮らしが手に入る可能性が高い。学力面で優秀な人と付き合いたいと望むことはなんら不自然ではありません。それが動機でインカレサークルに入ったとしても、別に責められることではないですよね。きっとDUAL読者の中にも思い当たる人はいるでしょう。

 この小説に登場する男子学生やその両親は鼻持ちならない学歴至上主義の人々ですが、決して特殊ではなく、ある階層においてはごくありふれた人々なのだと思います。

 身内に有名大卒の人がおり、親は名の知れた組織で頭脳労働をしていて、学力や身だしなみにうるさい家庭で育った人にとっては(私もその一人です)、人を判断する物差しの一つとして学歴がある程度重視される環境は馴染みが深いはずです。そういう環境で育った者には、ただ漠然と世の中には「いい学校」があり、自分たちはそこに通う人たちとは関係のない世界で生きていると思っている人々に見えている日常は、想像がつきません。

 小説の中では、そんなブランドとは無縁のごく平凡な家庭で育った女の子が東大生に恋をした顛末が描かれます。インカレで知り合った彼から都合のいいセフレ扱いされても思いを断ち切れず、呼び出された宴会で酒を飲まされて、裸にされて肛門に箸を突っ込まれ、体に熱い麺をかけられ、性器にドライヤーの熱風を当てられ、殴ったり蹴ったりされ、泣きながら逃げ出して警察に通報したのです。彼女が加害者たちに示した示談の条件は、東大を自主退学することでした。

 そんなの、女の子がバカすぎる。そもそも東大生狙いだったんだから、自業自得じゃないか。そう思う人もいるかもしれません。実際の事件でも、ネット上には被害者への苛烈なバッシングがあふれました。

南半球は冬です。先日家族で訪れた国立公園の中のコテージで、慣れない暖炉の番をする私。暖房器具はこれと電気毛布だけなので、火を絶やさないよう必死です。あんまり熱心に見つめていたため、翌日は顔が赤く火照ったままでした
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