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妻の名字選んだ社長、選択的夫婦別姓裁判を闘争中

子育て・教育

妻の名字選んだ社長、選択的夫婦別姓裁判を闘争中

サイボウズ社長・青野慶久(上)「お前が行くしかないぞ」と呼ばれた気がして、経済的不利益をもって国を訴えた/批判にはユーモアで応じる

少子高齢化、人権、子育て支援など、今日本の社会が直面している諸問題について、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが各界の専門家や政治家に切り込む本連載。今回は、選択的夫婦別姓制度を実現するために国に対して裁判を起こしたことで話題となったサイボウズ青野社長にお話をお聞きします。17年前に結婚したときに妻の名字に改姓したという経緯がある青野さんと、裁判までの経緯やそこから見えてきたことなどについて語り合いました。上下2本の記事でお届けします。

妻の姓にするのは超レア体験。軽い好奇心で名字を変えた

駒崎弘樹(以下、駒崎) サイボウズの青野社長といえば、3度の育休を取った上場企業社長であり、自社メディア「サイボウズ式」でワーキングマザーのリアリティーを描いた動画を発信するなど、常に世の中の先を行ってるビジネスリーダー。その青野さんが昨年秋、「選択的夫婦別姓制度を実現するために訴訟を起こした」というニュースを知ったときには「さすがだ!」と思ったわけですが、どうやら意外なところから反論・批判を浴びていると聞き、何が起きているのか、ご本人の口から聞かせていただきたいと参じました。

青野慶久さん(以下、敬称略) そうそう、意外な展開になっているんですよ。

駒崎  まずおさらいとして、「青野」という姓はご結婚するまでの旧姓で、結婚後は奥さんの姓、「西端」に変えたということですね。つまり、普段、パブリックに使われている「青野」は戸籍上の本名ではないと。実はずいぶん前から個人名義でフローレンスに寄付もしてくださっていたのですが、そういう事情から西端さんのお名前で記録されていたので、我々はずっと気づかなかったということがあったんです……。恩知らずですみません。でも、そこで僕が驚きや意外な印象を持ってしまうということ自体、「男性は名字が変わらないもの」という先入観があるんだなと気づかされました。そもそも改姓したきっかけを教えていただけますか。

青野  きっかけはシンプルで、2001年に学生時代から長く付き合っていた彼女と結婚したときに、彼女が「私、名字を変えたくない」と言ったんです。それまでそういう話をしたこともなかったんですけれど、彼女がたまたま大学でジェンダーの講義を受けていて、思うところがあったのかもしれません。

駒崎 結婚相手から「名字を変えたくない」と言われて、青野さんはどういう反応を?

青野  想定外でしたが、ちょっと好奇心が湧いちゃったんです。「これってある意味、世の男性のほとんどが体験していないことだよな」と。たしか現在で4%しかいないそうです。超レアな体験をできるチャンスがあるなら、やってみようかなという好奇心が理由の一つ。もう一つは、「そうは言っても、青野姓も適宜使えるやろ」と気楽に構えていたからです。旧姓で働いている女性はたくさんいるし、普段は「青野」を使って必要なときだけ「西端」を使えばいいかな、くらいの気持ちでやっちゃったんです。実際はそんなに甘くなかったんですけどね。

駒崎 世の中の女性の96%が結婚後に姓を変えていると、それがフツーかなと思っちゃいますよね。でも、そうじゃないレアさに惹かれたと。僕だったら、嫌だったかも。「駒崎」という名字を結構気に入っているんで。

青野 いや、僕も「青野」は相当好きなんですよ。まず、学校で出席番号はほぼ1番で、大学の出席確認でも最初に名前を呼ばれるからすぐに教室を出られたり(笑)。ツイッターのアカウントも、アメリカでサービスが始まった直後に「@aono」を取りにいきましたしね。すごく愛着はあったので、決して捨てる気はなかったんです。

駒崎 なるほどね。捨てたくはなかったと。きっとそれは改姓した人のほとんどがそうですよね。ずっと慣れ親しんできた姓を簡単には捨てたくないと。青野さんも戸籍上は改姓しても「青野」と名乗っていくつもりだったし、それほど困ることはないだろうという認識だった。しかし、実際には不便がたくさんあったんですよね?

名字の使い分けは面倒。でも統一したために会社に高額請求が!

青野 そうですね。まず、生活上の細々とした改姓手続きの面倒が膨大にありました。電気・ガス・水道の請求関係の登録、運転免許、パスポート……。もう途中で、どれが「青野」でどれが「西端」だったか考えるのが面倒くさくなって、ある時、スイッチが入って「まとめて西端にしたるわ!」ってクレジットカードから銀行口座まで全部変えたんですね。

 すると証券口座名義が変わったことで、保管されていたサイボウズの株式の名義書き換えも必要になり、結果、「81万円」という請求がサイボウズの会計に行っちゃったんです。経理担当から「青野さんが名字変えたせいで、めっちゃお金掛かりました」と言われ、「マジ!? ごめん」と謝るみたいな。

駒崎 実質的な損害が発生してしまったわけですね!

青野 今回、フローレンスさんの理事に就任させていただきましたが、手続き上は西端姓で名を連ねることになると思います。就任に際して身分証明として住民票を提出する必要があったので。身分証明が必要なシーンでは、「青野」とは名乗れなくなっちゃうんですよね。

駒崎 そうか、なるほどー……。実質的な不便も生じていると。でも、結婚は17年前ということですから、しばらくはそれに耐えてきたわけですよね。

青野 はい。ぶつぶつ文句を言って、ちょこちょこメディアではしゃべっていましたけれど。

駒崎 それがここに来て「やっぱりおかしいだろう」と声を上げようと思うに至った理由は何だったんですか?

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