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読書の秋 夏目漱石『こころ』を家族で読み解く

漫画家の長男、編集者の妻と読書感想大会を開催。夏目漱石の『こころ』を三者三様に読み解く。最後は“聖地巡り”も

 常々、「読書は裏切らない」ということを「おいしいごはんを食べようぜ」という言葉と同じくらいの熱を込めて息子たちに伝えたい、と思っている。

 息子たちは2人とも、小さなころは絵本が大好きだった。成長とともに、それなりに活字に親しんできたが、読書の世界は果てしなく、広くて深い大海だ。今、その岸辺に立った息子たち。お楽しみは見渡す限りはるか向こうまで続いているよ。さあ、漕ぎ出そう! というわけで、今回のテーマは時節にぴったりの「読書」です。

私、長男の千隼、妻の明子の3人で夏目漱石の『こころ』を読み込む。次男は500ページに及ぶ英文を読み、英文のリポートを提出する大学の課題に取り組んでいたため、今回は不参加でした(イラスト/小栗千隼)

それは夕食時のつぶやきから始まった

 ある日、本棚の片隅にあった文庫本の『こころ』を何気なく手に取った。始まりは、主人公の私が“先生”と出会う鎌倉の海だ。

 「そうして強い太陽の光が、眼の届く限り水と山とを照らしていた。私は自由と歓喜に充ちた筋肉を動かして海の中で躍り狂った」という文章を目にしたとき、高校以来、三度は読んでいるはずなのに、全く新しい小説に出会ったような驚きがあった。なぜかフランス映画の『太陽がいっぱい』を思い出した。唐突とも思えるこの連想はどこから来たのだろう? 読書はとても個人的な体験だから、としか言えない。だけど、極めて個人的であるがゆえに、その「なぜ」を他者と共有できたときの喜びは大きい。

 「『こころ』ってさ、なかなか一筋縄ではいかない小説だよ」と夕食時につぶやいたら、みんなノッてきた。女性誌でブックレビューを長く担当してきた妻・明子、漫画という創作の世界でもがいている長男・千隼、それぞれの『こころ』体験をぶつけ合おうじゃないかということになった。

 問題はこの夏、妻はインドでイベント、長男はフィリピンへ英語の勉強とネタ探しの旅に出るということだった。いつものようにごはんを食べながらまったりと語り合う、というわけにはいかない。とりあえず、読んだ感想をラインやメールでやり取りすることになった。

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